先週、台風9号が関東に上陸して本州を縦断していったその翌日、信州の木島平村にあるカヤノ平まで出かけた。
多摩川が危うく決壊というところまで増水し、西湘バイパスは道が崩壊していまだに復旧せず、高速も軒並み通行止めと、 各地で大きな被害をもたらした台風の直後で、途中の道が通行止めになっていることも予想したが、 信州の北部のほうは台風の目の北側に位置していたため、雨も風もさほどひどくはなく、山道を辿っても、木の梢すら落ちていなかった。
カヤノ平は、長野市の北東、志賀高原と野沢温泉のちょうど中間点に位置する高原で、標高1400mあまり、秘境秋山郷にも近く、 首都圏からはアプローチも長く、あまり観光客も入らない静かな高原。
この場所は、ぼくにとっては「エスケープ」の場所で、たまに、一人で静かに過ごしたいときに出かけていく。
長野道の信州中野ICを降りて、国道403号を北上、渋湯田中温泉への道を東に分けて、そのまましばらく進み、 県道から道標にしたがって清水平林道に入る。
つづら折れの林道を30分ほど、どんどん高度を上げていくと、ブナの巨木が迎えてくれる。その名も「大ブナ郷土の森」 と呼ばれるこの森は、日本一のブナ林とも称されている。
林道横に、森への入り口があり、そこから一歩踏み込むと、 まるで巨人の森の衛兵のような三叉に幹が分かれて天に伸び上がる大ブナが待ち受けている。
その大ブナのたもとには小さな社があって、お神酒が捧げられている。この「森の主」のような大ブナに挨拶して、森の中へ。
ちょうど霧がかかって幻想的な雰囲気の森は、他に人もおらず、 本来は人が立ち入ることのできない妖精たちの世界に迷い込んでしまったような錯覚を起こす。
この森の中には歩きやすいトレースがあって、ゆっくりと歩いて一時間あまり、様々な表情の巨木と対面することができる。
静謐な巨木の森は、都会で溜め込んだストレスをすっきりと吸い出してくれる。
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