「巡礼の道」といえば、日本では四国の「八十八カ所お遍路」や「熊野古道」が有名ですが、ヨーロッパというかキリスト教世界では、 「サンチャゴ・デ・コンポステーラ」が有名です。
キリスト教12使徒の一人である聖ヤヒブ(サンチャゴ)の墓が、9世紀初頭にスペイン北西部のサンチャゴ・デ・ コンポステーラで発見され、それ以来、ローマ、エルサレムと並んでキリスト教三大聖地の一つとされました。
このサンチャゴ・デ・コンポステーラへと、ヨーロッパ中から巡礼者が訪れるようになり、 次第にそのルートが巡礼の道として整備されていきました。
四国の巡礼では、接待宿と呼ばれる巡礼者を受け入れる宿があり、また、巡礼者は地元で暖かく受け入れられ、様々な「ご接待」 を受けるように、サンチャゴ・デ・コンポステーラへ向かう巡礼は、象徴であるホタテ貝のマークを付けていれば、巡礼として優遇され、 ルートの要所要所にある宿泊所を利用することができます。
「サンジャックへの道」は、傲慢な会社社長と無気力な失業者、 無神論者の高校教師の三人兄弟が母親の遺産を相続する条件にフランスからサンチャゴ・デ・コンポステーラまでの1500km、 2ヶ月の巡礼に出ることになり、その三人に、同じグループに加わった多彩な人たちが、 それぞれの悩みや思いを巡礼の旅の中で昇華していく課程が描かれています。
広大な草原を突っ切り、ときに険しい岩山に登り、清冽な流れで沐浴したり、中世そのままの石造りの街に出くわし、 ピレネーを越えると、一転して乾いた大地が続き……南ヨーロッパの変化に富んだ自然が、バックグラウンドであり、何より、 巡礼者たちの意識を、心を変化させていく要因であることを実感させてくれる美しい映像が続いて、まったく飽きさせることがありません。
旅の半ばまで、自己主張をぶつけ合って、いがみ合い、日常生活の呪縛から離れられずにくよくよと悩んだり、 人間模様がクローズアップされて、観客はそちらに気を取られて、背景の景色の素晴らしさが霞んでいます。
ところが、このグループの心が通い合い、彼らが、自分たちを取り巻く自然に目を移したときから、観ているこちらも、 同じ風景の中にいるような感覚で、自然との一体感、自然がもたらしてくれるモノを受け止める気持ちにさせられます。
サブタイトルにあるように、「人生って、捨てたもんじゃない」と感じさせてくれる、ハートウォーミングなロードムービー。 お勧めです!!
ちなみに「サンジャック」は「サンチャゴ」のフランス式の言い方です。
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