今回の取材では移動にオートバイを使いました。飛行機で沖縄まで飛び、現地でオートバイをレンタルするフライ&ライドというシステム。 沖縄にはレンタルバイクの店がたくさんありますが、今回はハーレーダビッドソン沖縄のプランを利用しました。
FLSTC(ヘリテイジソフテイルクラシック)というモデルで、 1.6リッターのビッグツインエンジンをドコドコいわせながら左手にエメラルドグリーンの海を行く気分は、まさにアメリカです。 幹線道路も島のリズムでみんなゆっくりのんびり走っているので、ハーレーののんびり感はぴったりマッチしています。
**「琉球王国のグスク及び関連遺産群」 の一つ。今帰仁城跡**
まずは、那覇から名護に向かい、世界遺産にも指定されている今帰仁(なきじん)城跡へ。 海を望む丘の上に小さな石を緻密に組んで周囲1.5㎞にも渡る石垣を巡らしたこの城は、 2000年12月のユネスコの世界遺産委員会で座喜味城跡、勝連城跡、中城城跡、首里城跡、園比屋武御嶽石門、玉陵、識名園、 斎場御嶽と共に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」として世界遺産リストに登録されました。
**今帰仁城から、 遠くの島影に向かってお供えをして、祈りを捧げる人たち。自分の故郷の島の御嶽を拝んでいるのだろうか?**
北東に真っ直ぐ伸びる参道を辿って石の門を潜ると、石垣に囲まれた城内。今では建物はなく、石垣もところどころ崩れていますが、 往事は栄華を誇っていたことが想像できます。城内のあちこちには小さなウタキや拝所があって、 この日も地元の人たちがお重にお供えの料理を詰めてお参りに来ていました。
この今帰仁城跡の西方には、二つの峰をなだらかな尾根で繋いだ特徴的な山があります。 沖縄では城=グスクそのものが政治的な中心を成すと同時に祭祀の中心でもあり、ご神体とする山や岩を拝む形になっています。
**今帰仁城のご神体となるクボー御嶽の山。 麓から細い踏跡がついている。詳しいアプローチの仕方は今帰仁城のガイドが教えてくれるが、神聖な場所なので、 物見遊山では立ち入らないほうがいい**
今帰仁城のご神体は、この山で、ここが沖縄七御嶽の一つ、クボー御嶽となっています。クボーとはビロウの木のことで、沖縄方言で 「クバ」と呼ばれています。ヤシ科の常緑高木で、いかにも熱帯らしい樹様をしています。その葉を笠や団扇として使い、 また皮は繊維として履き物などに利用し、まさに神がもたらしてくれた利用価値の高い木として大切にされています。
さて、そのクボー御嶽への道は、かすかな踏跡はついているものの、鬱蒼としたジャングルの中で、 今にもハブが飛びついてきて足でも噛まれそうな感じです。おそるおそる探りながら前進していくぼくの頭上で、 本土では聞いたことのない甲高い鳴き声の鳥たちが喚いていて、まさにジャングル探検の気分。
進めば進むほど踏跡が細くなっていって、徐々にこの径でいいのかと不安になってきます。すると、先行する人の影が……。 その後をついてしばらく行くと、ちょうど今帰仁城跡から遠望した山の麓にある開けた場所に出ました。斜面を利用して階段状に石組みされ、 社のようなものが置かれています。
**ジャングルを掻き分けていった先に現れるクボー御嶽。 今帰仁城跡から遠望した山の麓にあって、その山を拝するようになっている**
先行していた初老の夫婦連れは、さっそくその社の回りの掃除を始めます。
「すいません、ここは撮影させていただいてもいい場所ですか?」
おそるおそる声を掛けると、厳つい雰囲気の旦那さんのほうが、こちらをにらみ据えるような眼差しを向けて、 それでも頷いてくれました。
御嶽巡りを始める前に、地元の友人に注意点などを聞きましたが、いずれも地元の人たちが信仰の場所として大切にしているところで、 よそ者が無闇に立ち入ることは嫌うとのこと。人がいたら、必ず挨拶して、断りを入れろと忠告されました。
ここは、馴れ馴れしく話しを聞くといった雰囲気でもなく、しばし、ジャングルの中の聖地の雰囲気を味わってから、 静かに帰路につきました。
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