11~13日にかけて、白馬で取材やら打ち合わせやら。低気圧が通り過ぎた後、
息を飲むような景色を見せてくれた白馬三山。しかし、数日前にはここで九州から来たパーティ4人と東京からの単独行の登山者、
合わせて5人の命が失われた。
先週、白馬岳の頂上付近で、一度に4人の命が奪われた。
九州からやってきた7人のパーティは、白馬岳の西麓にあたる祖母谷から登りはじめた。途中で雨になり、さらに稜線に出ると、 急激に発達した低気圧による激しい吹雪に見舞われた。
祖母谷から白馬岳へのルートは10時間あまりのアプローチとなる。普通、このルートは下山路として用いられることはあっても、 登山路に選ぶパーティはない。白馬村の山岳関係者は、まず、このルーティングに問題があったと指摘する。
白馬村側からは、いくつものルートがあり、それぞれ4~5時間で白馬岳の頂上に立つことができる。どうして、遭難したパーティは、 わざわざたいへんなルートを選んだのか?
彼らが行動を始めてから、雨が降り出した。そして、稜線に向かううちに体は濡れていった。急に吹雪きとなったら、 汗で濡れていただけでも急速に体温を奪われてしまう。それが雨でびしょ濡れのところに、温度が一気に下がり、 吹雪に見舞われれば致命的になりかねないことは、わかっていたと思うが……。
長く苦しい登りに耐え、その上、雨で体力を消耗していた彼らは、再び長い下りを撤退することを選びたくなかったのだろう。 それは人情としてわかるが、仮にも、山岳ガイドが付いていたのだから、彼は、客を説き伏せて、 目の前かもしれないが稜線の上にある小屋を目指すよりは下山したほうが得策だと説得すべきだった。
いや、それ以前に、天候が急変することは予想できたはずだから、登山を中止すべきだった。そのいずれもしなかったということは、 ガイドが少なくともこの山域にかけては未熟だったということだろう。
白馬岳といえば、夏にはお花畑が美しい、たおやかな女性的な山容だ。北アルプス南部の穂高や剱、立山などと比べると、 急峻な岩場もなく、容易に登れる山という印象がある。
だが、地元白馬の山岳関係者は、10月、11月の白馬は、天気次第で、相当なベテランでも危険な山となるという。
吹きさらしの尾根は、今回のようにはじめに雨が降って、それから吹雪となるような場合は、ガチガチに凍って、 アイゼンもピッケルも歯が立たなくなるという。そんなところで突風が吹き荒れれば、瞬く間に谷底へ滑落してしまう。かえって、 まとまった積雪がある厳冬期のほうが、こと登降に関しては容易だし、いざというときには雪洞を掘ってビバークできるので安全だという。
パーティのうちの二人は、山小屋からわずか400mの地点でビバーグしたまま凍死してしまったが、ツェルトは強風で飛ばされ、 ザックを風からの盾にしていたものの、防寒用の装備はフリース程度しかなく、到底持ちこたえられるものではなかったという。
生き残った山岳ガイドは「一生を掛けて亡くなった方たちに償う」と会見したそうだが、いったい、 何をどうやって償うというのだろう?
少なくとも生き残った者として、同じような事故が起こらないよう、克明に遭難にまで至るプロセスを発表しなければならない。
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