アンダーウェアは生地のウィックドライ性がポイント
**ウィックドライ性の比較: 左は綿素材のTシャツ、右はクールマックス素材。 いずれも水に漬けた後に10秒間脱水した状態。綿のほうはまだビショビショで着られる状態ではないが、 クールマックスのほうは、少しひんやり感じられる程度で、このまま着ても問題なし**
最近、海外に行っていた友人が何人か帰国して、「それにしても日本の梅雨は不快だなあ。 昔からこんなにジメジメして気温も高かったっけ?」と、流れ落ちる汗をぬぐいながら、うんざりしたように言います。
本来なら、太平洋高気圧が徐々に勢力を拡大して、 梅雨前線を日本列島の北に押し上げる形となって梅雨が明けるわけですが、今年は列島上に居座りっぱなしで、 順当に梅雨明けしてくる気配が見られません。長雨と大雨による被害も拡大していて、まったく困ったことです。
ところで、前回は「梅雨を快適に過ごす その1」として、 汗で蒸れない防水透湿素材のレインウェアや両手が自由になって荷物も濡らさずに済むポンチョを紹介しましたが、今回は 「アンダーウェア」と「フットウェア」をご紹介します。
まずアンダーウェアに求められる機能は、体表面にかいた汗を吸い出して、これを素早く蒸散させる 「ウィックドライ性」です。
冬山登山では水分を生地に貯めやすい(「親水性」 といいます)綿などの素材のアンダーウェアを着ることは厳禁とされます。それは、 行動中にかいた汗をアンダーウェアの生地が貯め込み、これが冷やされることで体温を奪われてしまうからです。 どんなに暖かいダウンジャケットを着ていても、 濡れたアンダーウェアによる冷えで凍死してしまうなどといったことにもなりかねません。
夏場は逆に濡れたアンダーウェアが効率的な汗の蒸散を妨げて、 さらに発汗を促して急速に体力を消耗することになってしまいます。風通しのいい場所でゆったりくつろいでいるのであれば、 綿素材のアンダーウェアでも差し支えありませんが、アウトドアで行動するには、 ウィックドライ性の高いアンダーウェアが断然快適です。また、今回の記事のテーマである「梅雨を快適に過ごす」 という点でもお勧めです。
ウィックドライ性の高い素材には、「クールマックス」、 「ウィックロン」 、「スパイルフィル」 などが上げられます。それぞれに生地の厚みや、天然素材と組み合わせて肌触りを自然にしたものなど固有の特性があります。 一般的には冬を含めたスリーシーズン用にはこれらの素材で厚みのある生地、夏用には薄手の軽い生地に仕上げてあります。
梅雨の間は、これらの素材のうちの夏向けのライトウェイトタイプを使用したTシャツなどをそのまま着たり、 アンダーウェアとして着用すれば、アウトドアだけでなくタウンシーンも快適に過ごすことができます。
足下にも防水透湿素材を
*"ゴアテックスブーティ"を使用した「ダナーライト2」(左)、「ダナーライト」(右)。 右のダナーライトは15年以上愛用して世界中のフィールドを共にしてきた。引退の後は、 同じシリーズの左の製品を愛用*
前回、「梅雨を快適に過ごす その1」では、防水透湿素材がレインウェアを変革して、 雨の中でも快適に活動できるようになったことをご紹介しましたが、同じように防水透湿素材を用いることで、足下を快適にした 「ゴアテックス・ブーティ」があります。
これは多孔質のゴアテックスフィルムをラミネートした素材を靴下型にして、 ブーツの内側に貼り付けるもので、これを用いることで、ラバーコートの防水靴やワックスを塗り込めた防水レザーの靴でなくとも、 高い防水性を持たせることができ、さらに防水透湿素材ならではの蒸気発散性も備えて蒸れをを防いでくれます。
世界で最初にゴアテックス・ブーティを製品化したのは、ワークシューズの老舗「ダナー」でした。
もう20年近く前、そのダナーの「ダナーライト」を購入して以来、 このブーツを履いて日本のフィールドはもとより砂漠やパミールの高山や湿地まであらゆる環境でお世話になりました。
足首までの水位なら、水の中に立っていても浸水せず、たとえば雨の中をオートバイで走るようなケースでも、 足首回りの防水をしっかりしておけば、足はまったく濡れずに、しかも蒸れもせず常に快適でいられます。
足の蒸れは、擦れて熱をもってマメや靴擦れを作る原因となります。それを防ぐ意味でも、 防水透湿素材を用いたブーツの使用は効果的です。最近はタウンユースでも自然なシューズタイプのものもあって、 雨の多い今の季節にはお勧めです。
*現行の「ダナーライト2」。ゴアテックス社とダナー社が共同開発したこのブーツは、 アウトドアブーツの概念を書き換えました。機密性を保つためにベロは「袋ベロ」を採用。 ブーツとの縫いつけと成形はステッチが足に当たって不快にならないように工夫されています*
*こちらはゴアテックス素材を靴下型にした防水透湿ソックスで、これを普通のソックスの上に着けて、 靴を履くことでゴアテックス・ブーティと同じ効果を得ることができます「モンベル GORE-TEXオールラウンドソックス」 *
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