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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.255
2023年2月2日号
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◆今回の内容
○不老不死と錬丹術
・錬丹術とは
・外丹から内丹へ
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不老不死と錬丹術
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今週の土曜日(2月4日)は、コロナ禍以降、久しぶりの本格的なツアーのガイドをします。今回は福井県の三方五湖DMO主催のモニターツアーで、福井県若狭町と美浜町に残る不老不死にまつわる伝説を巡るものです。
若狭では、長らく「お水送り」という奈良東大寺の「お水取り」に連動した神事を見学し、それにまつわる伝説の地を巡るツアーをガイドさせていただきましたが、この若狭という土地には、不思議なことに不老不死に関わる伝説が集中しています。
人魚の肉を食べて不老不死になった八百比丘尼、大陸から不老不死の妙薬を求めてやってきた徐福の一行が上陸したと伝えられる場所、白山を開き十一面観音を守り本尊とした泰澄が開いた長生の水の聖地、空海が岩に刻んだ聖観音のご利益で怪我が治り、そこに湧く水には長生の効験があるとされる観音の聖地。
そして、「お水送り」は、若狭で汲まれた若水が鵜の瀬という淵から流され、それが奈良東大寺の二月堂下にある「若狭井」から湧き出し、それを汲んで二月堂の本尊である十一面観音に供えられる「お水取り」へと続く神事ですが、これは不老不死の丹薬を作るための水銀を若狭から送ることを象徴するものでした。
今回は、そうした不老不死にまつわる場所すべてを巡るわけではありませんが、4月から就航する遊覧船で、三方五湖を渡って聖地に上陸したり、梅丈岳という三方五湖の畔にそびえる山から、若狭ー京都(平安京)ー奈良(平城京・東大寺)ー熊野ー潮岬へと南北に続くレイラインの一部を見通し、GPSで位置関係を検証するなど、今までにない体験が組み込まれています。
前回のこの講座では、自然魔術をテーマに、その最後で錬金術についても触れましたが、東洋、とくに中国では西洋の錬金術に比するものとして錬丹術がありました。若狭の数々の不老不死伝説は、じつはそのすべてが、この錬丹術に関わるものなのです。
錬丹術は一般的には道教思想における至仙(仙人になる)のための法や養生術を指すと考えられています。しかし、それは道教に限らず、密教にも大きな影響を及ぼし、さらには日本の修験道や神道にも大きな影響を与えています。
今回は、そうした東洋の錬金術ともいえる錬丹術について、その成り立ちや思想を辿ってみたいと思います。
●錬丹術とは●
かれこれ30年以上前になりますが、東京で中国の「三星堆遺跡」の展覧会が開かれました。四川省の長江中流域にあるこの遺跡は、長江文明に属し、約5000年前に栄えたと考えられるもので、独特のデフォルメされた巨大な人面や神の依代と考えられる神樹、様々な祭具などが原型のままで発掘されました。それらは、貴重な玉や金、青銅を惜しげもなく使われていて、当時の三星堆が高度な冶金技術を持っていたことと、とくに祭儀において金が大きな意味を持っていたことを物語っています。
金の仮面といえば、エジプトのツタンカーメンの黄金のマスクが有名ですが、ツタンカーメンの在位は紀元前1332年から1323年ですから、三星堆の金のマスクはそれよりも1500年以上も古いものになります。
エジプト人は神々の肉体は金でできていると考えていました。金は腐食することがなく、その輝きを永遠に留めることから、完全なもの、不死性を秘めた物質と考えられ、それが不死の存在である神に結びつけられたのです。そこから、ファラオの身体を金で覆えば、その魂は永遠のものとなり、この世に再び復活すると考えたのです。
三星堆に見られる金の仮面や金器なども、まさに同様の不変性、不死性を象徴するものだったのでしょう。その意味では、西洋の錬金術と同根であるといえます。しかし、西洋の錬金術は金という物質の不変性そのものに価値を置いて、非金属から貴金属の金を生み出すこと自体が目的化していったのに対して、中国では不変性と不死性という概念を実現することに焦点が合わせられることで、必ずしも金を作り出すことが目的でなくなり、不老不死の「薬」を作り出す錬丹術という方向に進んでいきました。
もっとも、西洋の錬金術も、様々な試みが成された挙げ句、非金属から金を作り出すことが不可能であるとわかり、その代わりに錬金術師が錬金術のプロセスを実践することによって、自らの精神性を高めるという方向へシフトしていったわけですから、最終的には同じ方向性に収斂していったともいえます。
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