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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.207
2021年2月4日号
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◆今回の内容
○陰謀論について 2 ―偽書・偽史、デマ―
・アインシュタインの予言!?
・竹内文書と日ユ同祖論
・偽書・偽史の年代記
・あとがき
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陰謀論について 2 ―偽書・偽史、デマ―
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いまだに信じる人の多い話の一つに「百匹目のサル」というデマというか捏造話があります。
大分市にある高崎山自然公園は、一般にたくさんのサルが生息する「高崎山」としてお馴染みの場所ですが、ここを舞台にした作り話です。
この高崎山のサルの一匹が芋を海水で洗いはじめ、それを真似するサルが出てきた。すると、芋を洗って食べるという現象が高崎山のサル全体に広がった。すると今度は、高崎山だけでなく、世界中で芋や野菜を洗って食べるサルが出現しだして、この現象がポピュラーになった。
あるきっかけではじまったことが、まるでテレパシーで伝達されるかのように、場所を隔てて波及していく。それには、ある閾値があって、それを越えるまではローカルな現象に過ぎないが、その閾値を越えると、全地球的な規模に広がる……それを「百匹目のサル」現象として提唱したのは、生命科学者だったライアル・ワトソンでした。
ワトソンは、地球全体を覆う目に見えない神経回路のようなものがあって、それを通して局地的な現象が全地球規模に波及するという「コンティンジェント・システム」という仮設を立て、その具体的な事例として、この高崎山のサルから始まった「百匹目のサル」を紹介したのでした。
また、同様に、20世紀初頭まで、グリセリンの結晶化に誰も成功しなかったが、ヨーロッパの研究者がそれを成功させると、たちまち世界中のグリセリンが結晶化しはじめたという例もあげました。
高崎山のサルに関しては、ここをホームグラウンドにする京都大学霊長類研究所が、ワトソンの著作のような事実はまったくないと公式に発表します。芋を海水で洗って食べるサルは昔からいたし、それがあたかも流行のようになってサルがみんな芋を洗い出したなんてこともない。この話は、捏造であると。
その後、世界中のサルの研究者が「百匹目のサル」のような現象は、まったく確認されていないと報告します。さらにもう一つ、ワトソンが例にあげたグリセリンの結晶化は、1920年代初頭までは誰も成功していませんでしたが、カリフォルニア大学のギブソンとジオークという二人の科学者がグリセリンを -193 °C に冷却後、一日以上の時間をかけてゆっくりと温度を上げ、17.8 °C にすることで結晶化することを発見し、その手法が紹介されて、世界中でグリセリン結晶化の追試が行われたものでした。
この後、ライアル・ワトソンは「百匹目のサル」を含めて、多くが自分の捏造した話であることを認め、以後、公式な場から姿を消し、著述活動もやめてしまいました。彼が「ノンフィクション」として世に出したものはすべて評価されなくなりました。
彼は、非常に学際的で博識な人で、その作品のトーンも叙情的で訴えかけるものがあり、じつは私も大好きな作家の一人だったので、捏造話で身を滅ぼした代表的人物と成り下がってしまい、とても残念に思いました。
「ノンフィクション」と銘打たず、「フィクション」として発表していれば、想像力豊かな作家として、もっと長く作家活動を続けられたと思うのですが…。
しかし、いまだにテレパシーやシンクロニシティという現象に関して、「百匹目のサル」という話を引き合いに出して説明する人が後を絶たないのは、陰謀論と同じで、それがまったくのデマであることが証明されているのに、独り歩きしていくという深刻な問題を物語っています。
ちなみに、「百匹目のサル」も「グリセリンの結晶化」も、wikiで検索すれば、話が捏造された詳しい経緯などを知ることができます。
前回は、現代でも跋扈する陰謀論について触れましたが、今回はその陰謀論とセットともいえる捏造話、さらに偽書や偽史について触れてみたいと思います。
●アインシュタインの予言!?●
「百匹目のサル」と同様に、世間に膾炙したもののデマとわかって廃れていった話が、SNSなどでまた取り上げられて広がっていくという例が他にもあります。
その代表的なものが、「アインシュタインの予言」というものです。
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