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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.170
2019年7月18日号
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◆今回の内容
○流刑地と聖地
・讃岐と花崗岩
・能楽と佐渡
・重力異常と伊豆
◯お知らせ
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流刑地と聖地
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今年の夏は雨が多くて、憂鬱な日が続いていますね。
この20年あまり、私は昭文社が発行している「ツーリングマップル」というライダー向け情報マップの中部北陸版を担当しています。この取材が、毎年6月から8月にかけてあります。
この数年は、オートバイで走っていると、酷暑で命の危険を感じるくらいだったのが、今年は、一転して雨続きの冷夏で、凍えながら走っています。酷暑も異常なら、この冷夏も異常です。日本とは逆に今年のヨーロッパは異常な熱波に襲われていますし、気象の変化や偏在が極端になっていることを如実に感じます。
過去にも、極端な気象の変化はありましたが、それは地球気象に大きな影響を与えるほどの火山の噴火やあるいは隕石の衝突といったトピックが引き金になることがほとんどでした。ですが、今の極端な気象現象はそうした特別なトピックによるものではなく、知らぬ間に潮が満ちるように、じわりじわりと進んできた温暖化が原因です。だからこそ、余計に不気味でもあります。
エアコンの効いた部屋で暮らし、電車や車で移動していると、そんな変化にも鈍感になってしまいますが、外気に身を晒す仕事をしている人やアウトドアアクティビティを楽しんでいる人は、異常さを体感しているはずです。
本来、人間の「体感」はとてもセンシティヴで、自然環境の変化を察知する能力が高いはずなのです。そんな感覚をみんなが取り戻せば、切迫している地球環境問題をよりリアルに意識し、悪化を食い止めようとするムーヴメントもより広がっていくだろうと思うのですが。政策決定者たちが、快適な環境に身を置いている限り、地球環境の悪化は他人事であり続けて、気がついたときには手遅れということになりそうな気がします(すでに温暖化は食い止められないという見解もあります)。
私が聖地に興味を持ち、精力的にフィールドワークを続けているのは、一つには、聖地が人と自然とを取り結ぶ場であるからです。聖地に祀られた「神」は、その場所の自然の特性を端的に表すイメージです。ただ自然を大切にしようと言っても、その思いは容易には人に伝わりませんが、自然を神という超越的な存在に置き換えることで、神を敬い、その神が宿る土地を大切にしようと言えば、伝わりやすくなります。聖地は、神のような超自然的イメージを媒介として、自然と人が共生していくことを促す装置なのです。そんな装置としての聖地の意図と構造、そして機能を理解すれば、地球環境問題と聖地を有機的に結びつけることができるのではないかと思うのです。
装置としての聖地という観点で見ると、意外な場所がじつは聖地としての機能を持っていることがわかります。今回取り上げる流刑地も、まさにそんな場所です。聖地と流刑地というと、イメージとしては正反対のような印象がありますが、かつて流刑地とされた場所をみると、他の場所よりも寺社が密集しているケースが多く、また、古い伝統を受け継ぎ、古来の文化を色濃く残している場所が多いのです。
また、今は人気の観光地となり、多くの人が訪ねたい場所に挙げている例も多くあります。それは、かつての流刑地が、他の場所とは明らかに異なる、人の感覚を刺激する場所だからです。
●讃岐と花崗岩
四国は代表的な流刑地の一つです。とくに、讃岐は崇徳上皇の流刑で有名です。第161回「御霊信仰」でも取り上げましたが、崇徳上皇は「日本三大怨霊」に数えられるほど朝廷に恐れられました。単純に考えれば、朝廷に仇なすと考えられれば、絶海の孤島に一人置き去りにして、あとは忘れ去ってしまえばいいはずですが、讃岐はそんな場所ではありません。都からさほど遠くもなく、古代から人も多く住み、文化的にも比較的進んだ土地でした。
讃岐は、空海の出身地でもあり、彼が幼い頃から山岳で修行したことでも知られるように、古代から山岳修験のメッカでした。崇徳帝が配流された讃岐府中も五色台という山岳修験の山があり、崇徳帝の御陵はその一角に設けられています。
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