昨日は、茨城県鹿嶋市で完全自然農法に取り組んでいる「鹿島パラダイス」の田植えイベントに参加した。
田舎育ちだけれど、実家は農家でもないので、田植えといえば、もう50年くらい前の子供会のイベント以来かもしれない。でも、裸足で踏み込んだ泥の温かい感触はとても懐かしかった。
鹿島パラダイスの田植えは古式スタイルで、種籾を直まきした苗代の田があり、まずは、そこから丁寧に苗を取るところから始まる。泥の中からなるべく根を傷つけないように苗を掘り起こし、それを生育させる別な田に植え替える。
昼には鹿島パラダイスで収穫された大豆と野菜のカレーが振る舞われた。その米はもちろん、この田圃でとれた自然農法米だ。
「ここで田植えをして、何度か草取りして、そして収穫して、それを食べる。これが本当のサステイナブルですよ」と鹿島パラダイス代表の唐澤さん。このイベントはリピーターがとても多いとのことだが、自分で手塩にかけた米を一度食べたら、毎年、米作りに参加したくなるだろう。
天気にも恵まれ、気持ちのいい汗をかいた一日だった。
そんな田植えイベントが終わり、田圃から少し離れた駐車場への道すがら、内陸の街から来たという女性と話していた。
森の中の緑の隧道のような径を抜けると、涼しい風が吹いてきた。
「海風から陸風に変わりましたね」
何気なく言うと、彼女は、不思議そうな顔をしている。
「そうか、海沿いに住んだことがないとわかりませんよね」
この太平洋沿岸の地域では、朝から夕方までは、風は海から陸へと吹いて、夕方からは陸から海へ吹く。そんな気象の生理を話すと、
「それで、今日みたいな日も涼しいんですね」
と、頷いた。
真夏でも海と陸が呼吸し合うような風が吹くから、耐えられない暑さになることはない。
だけど、無意識に「海風、陸風」なんて言っておいて、そんな言葉が自分でひどく懐かしく感じた。
子供の頃、夏休みに海岸まで行って遊んでいるうちに、日が傾いてきて、海風が陸風に変わると、「ああ、今日も終わりかあ」と寂しくなる。そんな気持ちを思い出したからだろう。
人は土地の環境から、いろんなことを学ばされていく。そして、そんな智慧は、ずっと体に染み込んでいる。
コメント