何かに行き詰まったり、方向性に悩んだりしている人に向かって「流れに乗りなさい。そうすればすべてはうまくいくから」なんていう人がいるけれど、そもそも「流れ」が意識できていれば、誰に相談するでもアドバイスを求めるでもなく、自然にその流れに乗っていける。
流れに乗れないということは、停滞し逼塞して、流れが止まってしまっていると感じているわけで、「流れに乗れ」などというアドバイスはまるっきりピント外れでしかない。
ほんとうは、微かながらも身の回りに流れがあるのだけれどそれが感知できないから、立ち止まったままで身動きできずにいるのだ。
では、どうすればいいのか? それは、とにかく動いてみること、変化をつけてみることだ。やり方は人それぞれ違うだろうけれど、とにかく、今はまり込んでいるルーティンに些細な変化をつける動きをはじめてみることだ。
たとえば、ずっと引きこもっていて、昼間のお天道さまの下は眩しくて歩けないのなら、夜、世間がひっそりと寝しまった頃を見計らって、一ブロックでもいいから近所を散歩してみる。すると、夜風がめっきり冷たくなったことを実感したり、冴え冴えとした月の明かりに刺激されて、何かを感じるだろう。
ルーティンワークで疲れ切っているのなら、酒で疲れをごまかして寝てしまうのではなく、帰りの電車を一つ手前の駅で降りて、一駅分歩いて帰宅してみるといい。
止まったように見える水面にインクを一滴垂らすと、インクは目に見えない流れに乗って広がっていく。それと同じように、些細な行動を起こしてみることで、袋小路で行き詰まっていたように感じていた身の回りに流れがあるのを実感できるようになるはずだ。
そんな流れが見えたら、焦らず、流れを意識して行動し続ければ、気がついたときには自然の流れに乗れているはずだ。
かく言うぼくも、今年の初夏の頃に、逼塞感にとらわれて流れを見失っていたけれど、それまで日に4km走っていたジョギングの距離を6kmに伸ばすことで、体重が一気に減り、身軽になったら心も軽くなって、身の回りの流れが感じられるようになった。そして、今、その流れに自然に乗れたような気がしている。
長い人生のうちには、袋小路に嵌ってしまったように感じてしまう時期もある。そんなときは、止まったように見える水面にインクを一滴落として、それが広がっていく様を眺めるように、些細なことでいいから行動を起こして、その波紋の広がりに五感を向けてみるといい。
コメント