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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.130
2017年11月16日号
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◆今回の内容
◯奇神変神とその聖地
・首塚・首塚大明神・天目一箇神・金神
・犬頭神社・狸神
・芋明神・疫病神
・便所神・股倉神社・物臭大神
◯お知らせ
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奇神変神とその聖地
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「八百万の神」というように、神道世界では森羅万象あらゆるものに神性が宿ると考えられています。素朴に自然を畏れる視点から生まれるアニミズムとは微妙に異なり、それぞれ個性を持つ人格神としてイメージされるのが面白いところです。
御霊信仰もまさにそうした範疇に入るもので、一神教の世界なら堕天使や悪魔ととらえられる怨霊が、それを祀ることで崇敬する者に益を成すとされます。
藤枝静男の『田紳有楽』は、インチキ骨董商がいかにも年代物の陶器に見せるために、安物の陶器を古池に沈め、その陶器たちに宿った付喪神が賑やかに語り合う場面がユーモラスに描かれた私の大好きな小説ですが、この付喪神もまさに八百万の神の一種です。
今回は、そんな八百万の神の世界の中で、奇人変人ならぬ奇神変神をピックアップし、それらの神が祀られる聖地も合わせて紹介したいと思います。
「言説の認識論的な枠組みは、高らかに語られたり、主題として取り上げられたものの何たるかよりも、むしろ、そこで排除され欠落されたものが何であったのかということによって決定づけられる」とアルチュセールは記していますが、案外、今回紹介する奇神変神のようなものの中にこそ、日本人の心性が端的に現れているのかもしれません。
【首塚・首塚大明神・天目一箇神・金神】
・首塚と首塚大明神
御霊信仰といえば、桓武天皇が恐れた早良親王や学問の神として祀られた天神=菅原道真、明治の時代まで恐れられた崇徳上皇などが有名ですが、東国で親王を名乗り、朝廷に討ち取られた平将門もそんな御霊に数えられます。
東京のオフィス街のど真ん中、大手町の三井不動産ビルの前はぽっかりと中庭のような空間になっていて、将門の首塚があります。この首塚は、他の将門の胴や手足、具足を祀った七つの神社や祠を結んで、大地に北斗七星を描くように配置されて、江戸城の北方を守っていることで有名です。これは、江戸時代初期に徳川家康のブレーンだった天海僧正が、東国で朝廷に反旗を翻した将門を京都の朝廷と対峙する東の首都としての江戸の守り神としたものでした。
京都にも有名な首塚があります。かつての山城国と丹波国の境だった老の坂にある「首塚大明神」がそれです。
首塚大明神は、大江山に住んで都を騒がせた酒呑童子の首が祀られていると伝えられています。一説には、酒呑童子はもともと花山天皇の侍医で、天皇が脳の病を患った時にこれを治すことができず、安倍晴明に取って代わられてしまったために一族郎党を引き連れて山に篭って盗賊となったとされます。そして、源頼光に討ち取られたときに、自分の罪を悔いて、死んだ後は脳の病を治す神になると告げたと伝えられています。そんな由来から、脳の病に効くといわれています。また、なぜかギャンブルにも霊験あらたかとされ、多くのギャンブルファンが訪れています。
奈良県吉野にある脳天大神も脳の病やノイローゼに効くと信じられてきました。こちらは頭を割られた大蛇が祭神です。
・天目一箇神(アメノマヒトツノカミ)
天目一箇神は、その名の通り一つ目の神で、妖怪・唐傘お化けのモデルともいわれています。製鉄・鍛冶の守護神とされます。古代のたたら製鉄では、燃え盛る炎を片側に見ながら片足でフイゴを踏んだため、片目と片足が萎え、その姿から片目片足の唐傘お化けが生まれたといわれているのです。
天目一箇神は国譲り・国土平定の神話にも登場し、天津日子根神の子とされます。筑紫・伊勢の忌部の祖先神ともされています。
三重県の多度大社の祭神はこの天目一箇神で、風の神とされています。また摂社の一目連神社も祭神は同じ天目一箇神ですが、こちらはとくに暴風雨に特化した、いわば荒神の側面を祀ったものです。台風の目は一つですから、ビジュアル的にも神名にマッチしています。ちなみに、ギリシア神話のキプロスも鍛冶の神で一つ目ですが、世界中の鍛冶の神は同じく一つ目という特徴を持っています。
他に天目一箇神を祀るのは、兵庫県田野村の天目一神社があります。
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