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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.118
2017年5月18日号
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◆今回の内容
◯世界宗教の成り立ちと聖典 その2
・ユダヤ教と旧約聖書
・キリスト教と新約聖書
◯お知らせ
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世界宗教の成り立ちと聖典 その2
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前回は、中国で生まれた中華思想、インドのバラモン教と仏教の盛衰、そしてゾロアスター教を取り上げましたが、今回はその続きとして、ユダヤ教とキリスト教、それぞれの成り立ちと聖典、また両者の関係を掘り下げたいと思います。
【ユダヤ教と旧約聖書】
ユダヤ教の聖典は一般には『旧約聖書』と呼ばれますが、厳密にいえば、旧約聖書の中の最初の五つの書である『モーゼ五書』(別名『トーラ』)が、最重要な聖典として位置づけられています。
その五書とは、「創世記」、「出エジプト記」、「レビ記」、「民数記」、「申命記」で、それぞれがイスラエルの民が経験した歴史的な事件とその教訓を記し、さらに詳細な儀礼を挙げています。
このうち「創世記」は、ユダヤ教成立の背景であるイスラエルの民の出自をよく物語っています。エデンの園や、カインとアベル、ノアの箱船、バベルの塔などの話は、すべて「創世記」の中の逸話です。
ご存知の方も多いと思いますが、簡単に内容を振り返ってみましょう。
世界ははじめ混沌に満ちていました。そこに秩序をもたらしたのは神の言葉です。「神は<光あれ>と言った。すると光があった」。複雑系科学では、混沌状態が自己組織化に転じることを創発といいます。創発は、それまで安定していた砂山が一粒の砂の落下によって一気に全体が崩壊するように、とても些細なきっかけによって起こります。神の一言が宇宙の秩序を産み出したというのも創発のイメージに重なります。このように、アルカイックな概念が、最新の科学的知見に一致するケースがしばしば見られるのはとても興味深いですね。
いきなり話がそれてしまいましたが、創世記の逸話に戻りましょう。創世記では「神」は「ヤハウェ」と呼ばれています。「ヤハウェ」とは「わたしはある」という意味で、神の具体的な名前ではありません。一般的には、神という存在が畏れ多いもので、その名を口にするのがはばかれるので、「ヤハウェ=わたしはある」という当たり障りのない言い方がされるのだと説明されています。エリアーデは「ヤハウェは、現代の表現を用いれば存在と存在者の全体を示唆している」と記しています。言い換えれば、ヤハウェは宇宙全体と宇宙を創発させた事象を指しているといえます。畏れ多いから具体名を呼ばないという説明よりも、その概念を表す単語がないから、仮の名であるヤハウェと言っているというほうが、私は納得がいきます。
さて、そのヤハウェはまず宇宙を創造し、次に人間=アダムを創造します。アダムは、粘土で形作られ、その鼻から命の息を吹き込まれて、生命を与えられました。さらにヤハウェは、エデンに園を設けました。そこに、あらゆる「良い木」を生えさせ、アダムをエデンの園に置いて、そこを耕し、守るように命じました。次にヤハウェは、アダムを造ったときと同じように粘土をこねて動物や鳥を造り、アダムのところへ連れて行きました。アダムはそれらに名前をつけました。最後に、ヤハウェはアダムを眠らせ、肋骨の一本を取って、そこから一人の女「エヴァ(イヴ)」を造りました。
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