チェ・ゲバラのことを知ったのは、小学校の高学年くらいの頃だったろうか? たしか映画をテレビで観て、 漠然とキューバ革命が若者を中心にした理想主義が成就したということと、 ゲバラという人間がさらに自分の理想主義を貫くために革命運動を続け、 キューバでの成功を他で生かすことができずに非業の死を遂げたんだなという印象が残っていた。
69年に、オマー・シャリフがゲバラ役で映画化されているので、それを観たのかもしれない。
理想主義に燃え、それ故に孤立していき、かつての盟友カストロが国際政治の表舞台で注目を集めるのとは対照的に、最期は、 人知れず山奥の村で暗殺されてしまう。子供心に、その生きざまが神々しく思えて、ゲバラの名が記憶に残った。
その頃はちょうど70年安保の直後くらいだったから、全共闘世代にとっては、ゲバラは革命の象徴として、 いちばんもてはやされていたのだと思う。
何年か前に、『モーターサイクルダイアリーズ』が公開されて、学生時代のゲバラが南米を友達と二人でツーリングして、 抑圧の現状を目の当たりにして、社会主義に目覚めるプロセスが理解できた。
そして、先日、"Che part1"が公開された。
ここでは、当時のドキュメンタリー映像を交えながら、カストロと出会って、キューバ革命を成功させていく過程が描かれている。
監督のソダーバーグは同年代だから、ゲバラが革命のカリスマとして熱狂されている時代には、まだぼくと同じ小学生だったはずだ。 だけれど、たぶん一回り年齢が上の「革命世代」の熱狂を目撃していて、何かを感じ取っていたのだろう。
日本での予告編では、さもエンタテイメント作品のような思わせぶりなナレーションが流されているが、実際の内容は、 キューバ革命の時代の「雰囲気」を再現しながら、その中で、理想主義者のゲバラがどんな役回りを果たしていったのかが淡々と描かれている。
ゲバラの人生を時系列を追って描いているわけではなく、様々な場面が時系列を飛び越えて行ったり来たりしながら、 ゲバラの内面の変化を繊細に描いている。
part1では、カストロの右腕としてキューバ革命に成功し、国際政治の檜舞台に登場するまでがフォローされているので、 ゲバラの心の葛藤は、まだはっきりとは顕在化しない。だが、アメリカのメディアのインタビューへの受け答えや、国連での演説の舞台裏などで、 理想主義故の軋轢が、今後取り返しのつかない形に膨れあがっていくだろうことは予測させる。
今、インターネットが発達したこの世にあって、ゲバラが現れたら、「革命」の形も今までになかったものになるのではないか…… そんなふうに思えた。
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