東国三社のうちでも、他の二社に比べて地味な存在なのが、息栖神社だ。鹿島と香取に祭られる二神が、 武神でありその神剣であるのに対して、息栖神社は、武神の乗り物であった「天鳥舟」という地味な存在の神が祭られているせいかもしれない。
しかし、個人的には、鹿島と香取の両神宮が、豪壮ともいえる派手で大掛かりな作りなのに対して、息栖神社は、いかにも「鎮守様」 といった風情のこじんまりとして、地元に根付いた雰囲気に好感が持てる。
鹿島、香取両神宮は、ともに要石と呼ばれる、古代の巨石信仰を今に伝えるご神体が崇められているが、この息栖神社では、 井戸がご神体とされている。
神社が向くその先には、利根川の支流の辺に立てられた大きな鳥居があり、その支柱の両側に、小さな鳥居が立てられている。 その鳥居の下に、泉が湧いている。
利根川河口に近いこのあたりは、海水と淡水が交じり合う汽水域となっているが、この井戸は、 その汽水の中に湧き出す非常に珍しいもので、 「忍潮井(忍塩井)=おしおい」 と呼ばれ、伊勢の明星井、伏見の直井とともに日本三霊水に数えられている。
左右の泉は、 それぞれに女瓶、男瓶と呼ばれる瓶が据えられていて、その中から湧き出しているという。男瓶は銚子の形をしていて、 女瓶は土器の形をしている。
その瓶は、 とびきり天気のいい水の澄んだ日にしか姿を現さず、その姿が見られると幸運が舞い込んでくるといわれている。訪ねた日は、 身を切るような北風が湖水を海のように波立たせていたが、空は晴れ渡り、泉は澄んで、はっきりと、その瓶を確認することができた。
2008年は、 きっといいことが待ち受けているのだろう(笑)
**利根川の支流に面した霊泉「忍潮井」。この日は、幸運にも、 泉の中に据えられた瓶を目撃することが出来た**
**境内には、祭礼の際に若者たちが力比べをしたと伝えられる「力石」がある。これも、 古代の巨石信仰の名残だろうか? 樹齢1000年を越えるといわれる夫婦杉。こうした貴重な巨木が残されているのも、 日本人の魂の奥底に自然信仰がいまだに息づいていることの一つの証明だろう**
**水郷地帯に点在する東国三社をめぐり終え、香取神宮の一の鳥居まで戻ると、見事な満月が登った。この鳥居は、鹿島神宮を向き、 12年に一度の神迎祭の際に、鹿島から神を載せた使者が湖を渡ってやってきて、ここから上陸する**
■レイラインハンティング■
鹿島トライアングル ―東国三社と巨石信仰の謎―
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