アウトドア好きな人なら誰しも自分の好きな山や海の側で暮らしてみたいと思うだろう。
かく言う自分も、高校時代には白馬に1ヶ月滞在して、「将来はここに住もう」と決心し、 大学に入って年間100日も山に籠もるようになってからは、八ヶ岳や甲斐駒の麓や北上山地の高原やらと、その都度、「将来はここに住もう」 と決心したものだった……結局、思い描いたフィールドの環境とはほど遠い東京の場末に20年以上も住むことになってしまったのだが(笑)。
しかし、ぼくのように田舎暮らしを単なる夢で終わらせずに、しっかりとビジョンを持って、プランを立てて、実践していく人もいる。
Ryu Takahashi氏もそんな一人だ。彼は、ニュージーランド(NZ)の南島北端にあるエイベルタズマン国立公園で、 シーカヤックのガイドを生業として、ここに自分の城を着々と築いている。
アウトドアアクティビティ大国のNZは、クライミング、バックカントリースキー、トランピング(トレッキング)、 シーカヤッキングなどのガイドは、すべて国家資格として定められ、それを取得するためには厳しい試験と実務経験が課されている。今のところ、 日本人としてシーカヤッキングの正式なガイド資格を持つのは彼だけだ。
彼が資格試験に臨んだときのレポートも、命がけともいっていい実技の様子や、単に自然を紹介するインタープリティングだけでなく、 ユーザーをいかに楽しませるかといった話術やホスピタリティまで内容に含まれていることに驚かされたものだった。
そんな彼の人となりや、彼の仕事とライフスタイルは、また別の機会に紹介してみたいと思っている…… NZで彼のガイディングツアーに参加するという約束をずっと果たせずにいるので、この冬にはNZを訪問して、その様子を紹介するつもりだ。
Ryuさんのブログでは、NZでアウトドアガイドという仕事に就き、市民権も取得した彼の夢のコアともいえる「家造り」 の日記が連載されている。
土地の取得から始まり、地ならし、配管、基礎、棟上げ、外装、内装……当初は先進のエコハウスをセルフビルドでと考えていた彼が、 様々にリサーチして、その都度、現実と折り合いながら、自分のイメージする家を作り上げていく様子が、克明に記されている。
とにかくマニアックというか凝り性な彼の性格が良く出ていて、大工さんや施工業者が使う道具の一々に目をつけて、 その使い方や日本との違いなどのディテールまで記していく。はたまた家造りに関わる人たちまで克明に観察して、その性格やら、 ライフスタイルまで紹介していて、この日記を追うだけで、NZ人気質がよくわかってしまう。
じつは、彼の家造りを手伝う約束もしていたのだが、ぼくが訪ねる頃には、すっかり完成してそうだ。
もっとも、Ryuさん曰く、「この家は、とりあえず今できるものでベストなものとして造ってますけど、ぼくの理想の家は、 また別なんですよ。そっちの家造りのときには、しっかり手伝ってくださいよ。今度はセルフビルドですからね!!」。
日本的な感覚だと、マイホーム=終の棲家だが、その時々の環境やライスタイルに合わせて家も住み替えていくという発想からして、 もう日本人の枠を越えているのだろうなあ。
**着々と形になっていくTakahashi邸。今は、内装の仕上げに入っている。
土地の取得やNZ独特の慣習やら、書類の手続きやらと、周辺情報も充実していて、とても面白い。
彼の家造り日記を本にする出版社はないだろうか?**
Ryuさんは、来月、一時帰国予定。こちらでシーカヤックガイド向けの講習やツアーを企画している。そのどれかに参加して、 久しぶりに一緒に海に出られたらと思っている。
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