装備を劇的に軽くコンパクトにする新発想クックセット
アウトドアで使うクックセットといえば、 長らくアルミ製のコッヘルが主役でした。 そして、 アルミよりも軽く硬く、 腐食に強いチタン製のものも広く使われるようになりました。 さらにフッ素やセラミックコート加工などの技術も次々に導入されて、 薄いアルミやチタン素材の唯一の欠点だった焦げ付きの問題も解消……と、 続けていくとコッヘル(クッカー)のインプレッションになってしまいそうですが、今回は同じクックウェアでも、 やや異なる性格のもの。
コッヘルは目覚しい技術改良を進めてきましたが、その形体は家庭用の調理鍋やカップと基本的に変わらず、 アウトドアでそれなりの料理をしようと思ったら、大きさの異なる鍋やカップをセットで持たねばなりません。 ソロならばストイックにシェラカップだけのクッキングというスタイルもありますが、何人かでパーティを組むとなると、 やはりそれなりのクックセットを用意する必要があります。
「折り」、「可塑」=「オリカソ」 という発想
オリカソは、コッヘル=食器は金属製という先入観を取り払って開発された、 ポリプロピレン素材を用いた折りたたみのできる食器です。これを直接火にかけることはできませんが、 軽さとコンパクト性の点ではもろちろんチタン製クッカーでもかないません。
これまでのクックセットはクッカーとカップやディッシュを兼用することで総体的にコンパクト化と軽量化を図っていたわけですが、 オリカソはあえて「食器」に特化させることでその目的を達しようというわけです。
それなりの料理をしようと思えば、クッカーと食器をすべて兼用することはできないし、 パーティを組んだ場合には、通常なら調理に使わないクッカーを食器として用意する必要があったわけですが、オリカソを使えば、 そのような場合に、圧倒的に装備を圧縮できます。
その名もFlatWorldというイギリスの新興メーカーが製造元ですが、 オリカソは日本の折り紙を元に発想されました。名前は「折る、可塑」に由来しています。 厚みのほとんどない一枚の紙を複雑に折っていくことで立体的な造形を生み出す折り紙のスタイルは、 まさにそのままオリカソに生かされています。
パッケージはまさにFlatな封筒。中からオリカソカップを引き出すと、 それは単なる長方形のシートでしかありません。これを折り線に沿って山折り谷折りしていくわけですが、最初は「戻り」 の抵抗が大きいので、あらかじめ何回か折り曲げして慣らしておくと成型しやすくなります。
オリカソの発想のもう一つ面白いところは、 折り紙なら紙を折り入れして形を維持するところを合理的にホック留めにしたところ。シートを折って、 パチンパチンとホックを留めていけば自然にカップの形になっていきます。これなら折り紙のような「コツ」 はいらないから誰でも成型することができるわけです。
一枚のシートからカップを作るのにせいぜい10秒ほど。 この作業を初めて見る人には手品のように思えるでしょう。
このカップは取っ手の部分が本体に密着しない形に工夫されているので、 熱いコーヒーを注いでも取っ手は熱くなりません。ポリプロピレン素材も 110℃までの耐熱性があるので、 熱湯を注いでも柔らかくなって中味がこぼれたりする心配もありません。また、耐水性、対油性の高い素材なので、 食後もふき取るだけで汚れが落ちてしまい、メンテナンス性にも非常に優れています。
ソロでもパーティでもお勧め
その手軽さと場所をとらないコンパクト性から、 オリカソならちょっとしたハイキングでも持っていこうという気にさせます。 私はソロで出かけるときはいつも30年以上使い続けてきたデコボコのクッカー一つか、 せいぜいそれにシェラカップを合わせた程度で間に合わせていました。
ラーメンを煮るのも、炒め物も、コーヒーの湯を沸かすのも一つのクッカーなので味が移って、 食事への期待まで薄れてしまうのが、いつも悩みどころ。これにオリカソを一つ加えるだけで、だいぶ環境が改善されました。
調理はもっぱらクッカーで、食べ物を入れる食器はクッカーとシェラカップに限定して、 飲み物はオリカソを専用に。それでレギュラーコーヒーを淹れる手間も惜しくなくなりました。
大人数のツアーを主催するアウトフィッターやパーティ登山、あるいはファミリーキャンプなどでも、 オリカソは大活躍するでしょう。何より、共同装備の重量とカサを大幅に軽減でき、さらに後片付けの労力も軽減できます。
カップ以外にボールやサイズが可変できるディッシュもあるので、一揃い用意しておけば重宝します。
*パッケージから取り出したところは一枚のポリプロピレンの板。
まさにオリガミのように折り目に沿って曲げてゆき、スナップボタンで留めるとカップになってしまう。汚れも匂いもつかず、
便利に使える*
*カップの他に、 ディッシュやボウルもある。ディッシュの角を使ってコーヒーをドリップすることも可能。 傷がつきにくい素材で、
まな板代わりにも使用できる*
コメント