洋画を日本語吹き替え版で観るということは滅多にしないのだが、今回はドキュメンタリーのナレーションということで、 かえって画面に集中できるだろうと日本語版を選んでみた。
「50万年前、巨大な隕石が地球に衝突した。この衝突により、惑星は23.5度も傾いてしまった。しかし、この傾きこそが、 奇蹟ともいえるこの星の命の豊穣を作り出したのだ……」と始まる渡辺謙のナレーションは、淡々としていながらも、 気持ちがたっぷりとこもって耳に心地よく、テーマ性の高い内容が、すんなりと染みこんでくる。
北極に春が訪れ、長い冬ごもりから抜け出すシロクマの母子。その愛らしい姿から、南極へ向かって、映像の旅が始まる。
白い氷の世界から、徐々に緑が目立つようになり、ツンドラから広大な針葉樹の森「タイガ」へ。その雪原には、 動物の痕跡が極端に少なく、じつはあまり多くの命を育むことのできない不毛の地だと知って、意外に思う。
カメラが南下していくにしたがって、徐々に見慣れた温帯の広葉樹林へ。ここでは、 定点カメラが四季の移ろいをまるでリアルタイムで季節が変化していくかのように映しだし、その色彩の目の覚めるような変化に、 あらためて四季を持つ土地で生まれたことの喜びを噛みしめる。
生命の坩堝、熱帯のジャングル。一年のうちに乾期と雨期の極端な環境変化を見せるサバンナのその変化の激しさと、 水を求めて移動する動物たちの「生」への闘いに胸を打たれる。
あまりにも無機質で、だからこそ美しく、そして恐ろしい砂漠。天を突くヒマラヤの峰々を渡っていく鶴の神々しいほどの姿……。
陸から離れたカメラは、赤道の海に遊弋する鯨の親子をとらえ、この二頭の南極への旅を克明に追っていく。
この地球上で、こんなにも多彩な光景が展開され、そこにまさに奇蹟のような生物の営みが織り込まれている。頭で理解していても、 このearthが見せつけてくる映像の迫力に、ただただ唖然とし、自分が生きる、この地球のことについて、知っていたようで、 そのほんの断片しか理解していなかったということに気づかされる。
そして、果てしない地球の美しさと命の輝きに圧倒された後、それらが、人類による文明の犠牲になりつつあることを突きつけられる。
自らが生きる「氷」というステージを失い、飢えて死んでいくシロクマ……その姿からは、「果たして、 ここまで環境を破壊してしまって、今さら間に合うのだろうか」と途方に暮れてしまう。
しかし、荒れ狂う南氷洋で、互いにはぐれまいと、必死に位置を確認し合い、支え合いながら進んでいくザトウクジラの親子の姿に、 こうした命の営みを守り続けるためにも、ここで諦めてはいけないと思い知らされる。
earthが語っているのは、この地球が人類だけのものではないということ。だからこそ、人類は、 ここまで病ませてしまった責任を取って、地球を元の姿に戻すように努力をしなければいけないということが、お仕着せの環境論などよりも、 遙かに深く、重く、迫ってくる。
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