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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.258
2023年3月16日号
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◆今回の内容
○人間の意識とAI その2
・サイバーパンクとマインドフルネス
・人間の意識とAI
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人間の意識とAI その2
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今回は、前回からの話の続きになります。
前回、私は、1980年代の半ばにメキシコや中央アジアで少数民族と出会った体験から、彼らの生活や価値観に興味を持つようになり、日本のアイヌやシベリアの北方民族、オーストラリアのアボリジナルなど、世界中の少数民族の文化に興味を広げていったと書きました。
そして、未開民族といわれた彼らが、多彩な精神文化を持ち、それが幻覚性アルカロイドを用いた精神変容の儀式に深く結びついていることから、LSDなどを用いて人間の意識拡張を目指したティモシー・リアリーやジョン・C・リリーの研究に興味を惹かれたと。
なんだか遠い昔の話のようですが、じつは、リアリーやリリーの研究はその後も受け継がれ、サイバーパンクやスピリチュアリティの流れにつながっていきました。今日では、それはコンピュータサイエンスの最前線ともいえるAI研究とも深く結びついています。
近年流行った「マインドフルネス」といった概念も、彼らの研究の流れから生み出されたものでした。もっとも、マインドフルネスは、スピリチュアルムーヴメントの中で、本来の意識拡張という目標からだいぶ変質し、自己啓発のようなイメージとしてとらえられていますが。
そこで、今回は、リアリーやリリーの研究の内容を振り返り、そこから「人間の意識とAI」へどのようにつながってきたのかを辿ってみたいと思います。
●サイバーパンクとマインドフルネス●
ティモシー・リアリーはハーバード大学の心理学の教授で、同僚のリチャード・アルバートとともに、1960年代のはじめに、LSDやマジックマッシュルームなどの幻覚剤を使った「セルフ・エクスプロレーション・セッション」と呼ばれるセラピー手法の研究を行っていました。
LSDはスイスの化学薬品メーカーサンド社で、麦角の研究をしていた化学者のアルベルト・ホフマンが1938年に合成に成功し、1943年に幻覚作用があることが偶然発見されました。麦角とは麦類の穂に寄生する菌の一種で、かつお節状の菌核を作ります。これは中毒を起こすことが知られ、また、陣痛促進や子宮止血剤にも用いられていました。
ホフマンは、1938年にLSDの合成に成功しましたが、その後しばらく、この物質に幻覚作用があることに気づきませんでした。それに気がついたのは、1943年4月16日のことです。彼はLSDの化学構造を再確認するために少量のLSDを扱っていました。その際、彼の手から極微量のLSDの試料が吸収されました。その後、彼は自宅に帰りましたが、ふと研究の続きをしようと思いたち、自転車で研究所へと戻っていきます。その途中で、ふいに幻覚に襲われたのです。
はじめ、彼は取り巻く世界が急にスローモーションのように動きを遅くしたように感じました。さらに、「世界が強烈な色彩と造形に包まれたように」なり、「自分の意識が体から離れているように感じた」と研究日誌に記しています。このときの幻覚体験が強烈だったため、ホフマンはLSDの幻覚作用の実験と研究に取り組んでいくことになりました。ちなみに、この日は、後にカウンターカルチャーの世界で「バイシクル・デイ」と呼ばれるようになりました。
リアリーとアルバートに話を戻しましょう。彼らは、まず自分たちでLSDを試します。そして、その幻覚作用が精神変容による自己探究に役立つと確信し、「セルフ・エクスプロレーション・セッション=自分の内面と向き合うためのセッション」というセラピーの手法を作り出しました。
さらに、彼らはネイティヴアメリカンや中南米の少数民族に伝わっていたシャーマニスティックな儀式で使うペヨーテやマジックマッシュルームの成分であるシロサイビンやメスカリンなどがLSDと同様の幻覚を起こすことに注目し、その使い方も研究します。
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