□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.228
2021年12月16日号
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆今回の内容
○建築とレイライン
・鹿島神宮-江之浦-春日大社ライン
・明月門と桂離宮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
建築とレイライン
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
以前から、ぜひとも訪れたいと思いつつ、なかなか機会がつかめずにいる場所があります。それは、江之浦測候所です。
測候所といっても、本物の測候所ではなく、大規模な美術館=アート空間です。
ここには、冬至の日の出を拝する長いトンネルがあり、夏至の朝日を向かい入れてそれ自体を作品とする長大なガラス張りのギャラリーがあります。ほかにも、全国津々浦々、都市の片隅や太古の遺跡から集められた建築物やオブジェが、緻密に計算されて配置されています。そして、それぞれに深遠な聖地性が込められた物語が重なっています。
それは、あたかも「おまえは、レイラインハンターとして、この場に込められた様々な意味と意図を理解することができるか」と挑戦状を突きつけているようにも思えるのです。
レイラインハンターとしてはもちろん、一介の聖地研究者として、そこはまるで聖地のディズニーランドといえるような場所であり、今すぐにでも出かけていって、その世界にどっぷりと浸かりたいのですが、そこが私にとってこの上ない知的豊穣に満ちた世界であるがために、逆に気後れもしていたのです。
さらに、コロナ騒動が始まり、なかなか自由な移動がかなわなくなって、それは近くにありながら辿り着けない憧憬の土地のようになっていたのでした。
そんな折、この空間を仕掛けた張本人である杉本博司氏が、江之浦測候所に詰め込んだ想いと、設立に至るまでの経緯をまとめた『江之浦奇譚』が刊行されました。当然のように、この本を手にし、その内容に没頭する幸せな数日を過ごしました。
建築はレイラインと切っても切り離せない関係にあります。18世紀のイギリスの詩人アレキサンダー・ポープが建築に造詣の深かった政治家バーリントン卿リチャード・ボイルに宛てた書簡の中で、「ゲニウス・ロキ(地霊)」という言葉を使い、土地が醸し出す雰囲気と建築の関係について語り、これが建築の世界に、大地との繋がり=聖地性を重視することを促します。
すべてにおいて、その場所のゲニウス(精霊/雰囲気)に相談せよ。
それは水を昇らせるべきか落とすべきかを告げてくれる。
丘が意気揚々と天高くそびえるのを助けるべきか、
谷を掘って丸い劇場にするべきかを教えてくれる。
土地に呼びかけ、森の中の開けた空き地を捕まえ、
楽しげな木々に加わり、木陰から木陰へと移り、
意図したラインを切ったり、方向を変えたりする。
あなたが植えたとおりに塗り、あなたが作ったとおりにデザインしてくれる。
(「バーリントン卿への書簡」松永英明訳)
ゲニウス・ロキを意識するということは、つまりは、レイラインを意識するということです。
今回は、江之浦測候所を訪ねる予習という私的な思いも兼ねつつ、建築とレイラインについて考えてみたいと思います。
●鹿島神宮-江之浦-春日大社ライン●
杉本博司氏は、写真家であり、建築家であり、そして長年ニューヨークを拠点として骨董商を営んできました。さらに茶や書、能をはじめとする日本文化に加え、宗教史の造詣も深いマルチな才能の人です。自らは「数寄者」と称して、自由闊達に時代と空間を飛び越えた面白い試みを続けてこられました。
そんな杉本氏が、ライフワークの一つの大きな区切りとして取り組んだのが、この江之浦測候所でした。話が一気に飛びますが、江之浦測候所完成の仕上げとして、彼はこの場に守護神を祀ることにします。それは、正式に奈良春日山から分霊されました。
>>>>>続きは「聖地学講座メールマガジン」で
初月の二回分は無料で購読いただけます。
最近のコメント