今年も、3月2日に行われた若狭の「お水送り」に参加し、若狭湾沿岸に伝わる不老不死にまつわる伝説の地を訪ねるガイドをしてきた。
お水送りは、若狭の聖水「ご香水」を若狭彦・若狭姫神社の神宮寺の閼伽井から汲み、これを鵜の瀬という淵から流して奈良東大寺に送るという神事。
3月12日、奈良東大寺二月堂では、その袂にある若狭井から「ご香水」を汲み、これを二月堂の本尊である十一面観音に捧げる。
十一面観音は白山比咩の本地仏で、白山に由来する。白山比咩の別名は菊理媛(ククリヒメ)。業平の名句の一部「からくれなゐに水くくるとは」の「水くくる」は、括り染めの様子を表すとともに、水を潜る禊も意味する。つまり、菊理媛とは白山の神に仕える巫女も表している。
白山を開いた泰澄は、若狭にも足跡を残し、聖水が湧き出す泉を発見している。
その泰澄ゆかりの聖水を白山の女神であり巫女である十一面観音が奈良にもたらすのが、お水送り=お水取りの神事だ。
若狭と奈良を結ぶラインは、泰澄、良弁、実忠、空海という名僧たちが絡み、さらには八百比丘尼、徐福、浦嶋子(浦島太郎)といった不老不死の伝説が彩っている。
今年のお水送りは満月と重なり、いつにも増して幻想的な一夜だった。
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