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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.135
2018年2月1日号
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◆今回の内容
◯京都・洛北の結界 前編
・上賀茂神社の構造
◯お知らせ
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京都=洛北の結界
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先週末は、京都で行われた勉強会に参加し、京都の結界についてお話させていただきました。
その場には、拙著『レイラインハンター』でとりあげた上賀茂神社と貴船神社の宮司さんもおられて、少々緊張しました。というのも、拙著の京都の章のタイトルが「封じ込められた怨霊」であり、上賀茂神社は「歪んだ空間」と表現し、また貴船周辺は洛北の「鬼」の領域だったと、とり方によってはネガティヴな表現をしているようにも見えるからです。
そんなこともあって、まずはエクスキュースから話をはじめたわけですが、両宮司さんとも拙著での表現はまったく気にされず、境内の社殿配置や聖地のネットワークから見えてくる歴史について、たいへん興味を持ってくださいました。さらに、貴重な情報も直接伺えて、とても充実した時間を過ごすことができました。
振り返ってみると、京都では一昨年のちょうど同じ時期に、やはり内輪の会合で講演をさせていただき、上賀茂神社に縁のあるタクシーをたまたま拾ったことを思い出します。そのタクシーは、上賀茂神社の21年に一度の遷宮を記念して、その神紋である二葉葵が屋根の行灯に描かれていました。聞けば、京都を走る1200台のタクシーのうちの2台だけが二葉葵をシンボルにしていて、京都の人でも滅多に見かけないというのです。
このタクシーに乗った客は、とくに上賀茂神社とのご縁が強いとして、特別な御札との交換券を運転手さんから渡されました。残念ながら、遷宮の年のうちには訪問できず、御札はいただけなかったのですが、今回、上賀茂神社の田中宮司の知遇を得られたことは、やはりご縁の強さを物語っているのでしょう。
そんなこともあって、今回は、上賀茂神社の話から、京都・洛北の結界とその構造に秘められた意味について触れてみたいと思います。
【上賀茂神社の構造】
まずは、私が『レイラインハンター』の京都の章で書いた上賀茂神社の印象について、引用します。
「京都市街の北端、かつて化外の地とされた洛北の森が間近に迫る一角に上賀茂神社(賀茂別雷神社)がある。1200年前、恒武天皇が平安京の創建を決めた際、山城国の産土神である賀茂別雷神を現在の場所に勧請したもので、ここから南東3㎞の場所に位置する下鴨神社と一対を成し、王城の鬼門を封じて守護する機能を担っている。
上賀茂神社にお参りすると、何故か奇妙な感覚に囚われる。他の神社と異なるどこか雑然とした雰囲気。迷路の中に迷い込んだような居心地の悪い不安な感じ……。その原因はバランスを欠いた空間構造にあることがすぐにわかる。個々の社殿や儀礼の様式、神社としての佇まいに格別不思議なところはない。ところが、一ノ鳥居を潜り、参道を辿っていくにつれ、この場所の尋常ではない構造に違和感が募っていく。
一の鳥居を潜り、南から北へ真っ直ぐに伸びる参道は、神社としては当たり前の形だが、二の鳥居を潜ると不自然に北東へ折れ曲がる。神域を区切る瑞垣が視界を斜めに横切り、それを越えて中に入ると、瑞垣の斜線とも微妙にずれる軸線に沿った細殿が立ち塞がる。参拝者は本殿へ向かうためにこれを迂回させられる形になる。そして、細殿を迂回しても拝殿や本殿に直進することはできず、ジグザグに歩まされ、橋を二つ渡ってようやく本殿へ辿り着くことになる。
そして、肝心の本殿も不思議な方角を向いている。ノーマルな神社の本殿は南(方位角180度)を向く。まれに東(方位角90度)を向く場合もあるが、上賀茂神社本殿はそのどちらでもなく南南東(方位角163度)を向いているのだ。しかも、本来ならご神体として本殿の中もしくは背後にあるはずの盤座(いわくら)が、南南東を向いた本殿の正面に剥き出しで位置している。
この奇妙にねじ曲がった上賀茂神社の構造。じつはここに平安京=京都創建に関わる深い謎が隠されている」
あらためて読み返してみると、表現が少々思わせぶりで、もう少し淡々と綴ればよかったと反省してしまいます。初めて上賀茂神社を訪ねたときは、じっくりと佇まいを楽しむ余裕もなく、ハンディGPSでひたすら方位を測定して配置図を起こしていた頃で、他の寺社とは構造が明らかに異なるところばかりが気になって、それが強い違和感となっていました。そんな印象が記事に滲み出してしまったともいえます。今では、二つの川が堀のように囲み、俗域から切り離された境内に、景観と調和した社殿が点在するその佇まいに心が落ち着き、大好きな神社の一つとなっています……これはべつにいいわけではありません(笑)
少し詳しく、上賀茂神社について解説してみましょう。
上賀茂神社は、京都市街の北に位置する京都で最古の神社の一つです。正式名は賀茂別雷(かもわけいかづち)神社で祭神は賀茂別雷神。境内の周囲を囲む山は、古墳時代から縄文時代にまで遡る祭祀遺跡が点在し、古くからの聖地であったことがわかります。とくに、上賀茂神社が御神体山とする「神山(こうやま)」は、古代祭祀のセンターのような場所であったことがわかっています。また、欽明天皇の時代に始まったとされる例祭「賀茂祭(葵祭)」は三大勅祭の一つで、現代でも京都の人にとってもっとも親しみのある祭りとなっています。
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