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レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.122
2017年7月20日号
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◆今回の内容
◯聖地と地理
・フォッサマグナ
・アースダイバーの発想
・近畿三角帯と近畿の五芒星
◯お知らせ
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聖地と地理
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前回は、白馬の伏流水とスラブ起源水からはじめて、巨大な岩盤から水が湧き出す石清水八幡宮や天河神社、湯殿山神社の水などを紹介しました。こうした水を生み出すのは、独特な地質・地形であり、それは地球物理の壮大な営みによって生み出されたものでした。
水の聖地に関わらず、多くの聖地は独特の地質・地形の場所に位置しています。そうした場所の性質…それをゲニウス・ロキと言い換えてもいいですが…の背後にある地球物理の原理を知ると、地球上で生まれ、進化してきた私たち人類も、地球の営みによって生かされているものであり、それを忘れないようにする装置が聖地であるとわかります。
人間の営みが地球環境を悪化させて、自分たちの首を締めているような状態にある今、地球の営みを如実に感じ、地球と繋がっているという実感が持てる「聖地」という場所は、ますます重要になってくると思います。
【フォッサマグナ】
前回、長野県白馬村周辺はスラブ起源水の上昇地点に当たることと、スラブ起源水が、プレート境界で地殻がマントルに引き込まれる時に絞り出される水だということに触れました。これをもう少し詳しく説明してみます。
スラブ起源水のルーツは海水です。海洋プレート上の海洋底にある地殻は、常に強い海水圧を受けているので、その内部に水を含んでいます。海洋プレートが大陸プレートに引き込まれる時、その地殻に含まれた水はさらに膨大な圧力がかかって絞り出されます。地下数十kmほどの場所で絞り出された水は、そのまま地表に向かって上昇していきます。それがスラブ起源水です。
いっぽう、地下100km付近で絞り出された水は、マントルに吸収されます。マントルに吸収された水は触媒として働いて、周辺の岩石を溶かしてマグマを作り出します。そして作り出されたマグマは、周辺よりも密度が低いために上昇してきて、地殻でマグマだまりを作り、それが噴出すると火山を形成します。
水が触媒として働くというのは、水が岩石の融点を下げる働きをするということです。地下100kmほどのマントルがある場所では、温度が1400℃あまりになります。これはは、岩石が溶融するのに問題のない温度なのですが、この地点では圧力が非常に高いためになかなか溶融しません。ところが、地殻に含まれる水が触媒として働くことによって、岩石の融点が800℃から1000℃程度まで下がり、大きな圧力が加わっていても、溶けてマグマとなるのです。
日本の太平洋近海ではユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界に太平洋プレートが沈み込んでいるため、こうした作用が強く働いて、プレートの沈み込みの上部にある日本列島では、たくさんの火山が生み出されるわけです。
白馬周辺は太平洋からは離れていますが、日本海に近いために地殻に水分が含まれ、さらにフォッサマグナの北端に当たるために、地殻に圧力が掛かってスラブ起源水が生まれ、地表に向かって上昇しているのです。
本州全体はユーラシアプレートに乗っていて、太平洋側へ引っ張られています。これが、ユーラシアプレートと太平洋プレートの二つだけならば、ほぼ均等に動いていくわけですが、これにフィリピン海プレートが加わって三つ巴のような状態になっているために、非常に複雑な動きをしています。そもそも、私たちは「本州」が一つの大きな島だと思っていますが、地球物理的に見ると、本州は東北日本(弧)と西南日本(弧)という二つの島があって、これがフォッサマグナを境にしてぶつかり合っているのです。
伊豆半島は遠い昔には南洋に浮かぶ島嶼で、それがフィリピン海プレートの動きによって北へ進み、100万年前に島々がくっついてさらに本州にぶつかって伊豆半島になりました。つまり伊豆半島は、本州に食い込んだ矢のようなものなのですが、この矢が当たっているのは、フォッサマグナの南端なのです。
伊豆半島=フィリピン海プレートがフォッサマグナにぶつかり、これを巻き込んでいるために、フォッサマグナの東にある東北日本は反時計回りに動き、西南日本は時計回りの動きをして、互いに押し合う格好になっているのです。そして、フォッサマグナの北に位置する白馬周辺がもっとも強くぶつかりあって、スラブ起源水が絞り出されているというわけです。
フォッサマグナと、さらにフォッサマグナから西に紀伊半島と四国をまたいで九州も横切る中央構造線上には著名の聖地が並ぶことが知られていますが、それは地球内部の活動のダイナミズムが地表に表れ、それを畏れ敬った古の人たちの思いが形になったものといえるでしょう。
フォッサマグナに伊豆半島=フィリピン海プレートが食い込む場所には富士山があります。こうした特殊な地殻構造の場所にできた火山は、他に世界のどこにも存在しません。富士山は「カテナリ曲線」と呼ばれる優美な曲線を描く成層火山であるというだけでなく、その生成のメカニズムも「富士=不ニ」の山なのです。
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