中国内陸部のタクラマカン砂漠の周縁を中心に、天山の南北麓を結んで、 20年前に2ヶ月かけて巡ったところを2週間あまりの駆け足で辿る予定だ。
かつて、「シルクロード」という言葉には、エキゾチックで幻想的な響きがあった。残念ながら、 今は微かなノスタルジーは感じるものの、かつてのような未知の世界へ旅立つといった高揚感はない。
20年という月日はあっという間だった気もするが、世紀をまたいだこの20年の世の中の変化は凄まじいものがある。
20年前、中国はまだ堅固な共産主義体制にあって、外国人の西域=シルクロード入域もかなり制限されていた。 その数年前からNHKが入って、あの大ヒットとなった「シルクロード」シリーズが放映されていたわけだが、その時の映像も、 見たことのない自然と文化に彩られていて、実際にそこに身を置いてみるということに興味をそそられたものだった。
あれから20年。中国は開放政策の波に乗って恐ろしいまでの進歩を続けている。 経済的にすでに日本を凌駕したといっても過言ではないし、 強大な経済力と市場としてのとほうもない可能性をバックボーンにして政治的にも大きな影響力を持つに至っている。
20年前にシルクロードを訪ねる際には、事前に得られる情報は、それこそNHKの報道が全てといってもいいくらいで、後は、 近代に中央アジア探検を行ったヘディンや大谷探検隊の記録を紐解く程度が関の山だった。
それが、今ではGoogleEarthで、シルクロード主要都市の路地裏から、 タクラマカン縦断公路を走る車の一台一台までクローズアップして、 3D化した映像でそこにいるかのようにシミュレーションが可能になっている。
また、ネット上には、細々したオアシスの旅行記だけでなく、ライブ映像までアップロードされている。
都市化の波に洗われ、「辺境」は急速に姿を消し……自分の中でも、かつて「シルクロード」という言葉に抱いたイメージは消え失せ、 代わりに何が見えてくるのか。
未知の土地への素朴な憧れや懐かしさではなく、世紀をまたぐ20年という時間が、何をどう変えたのか、 その背後にあるグローバリゼーションとは何なのか……そんなことが浮き彫りになってくるのではないかと、 そんな風に今度の旅では期待している。
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