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コラム 神道とイスラム--偶像崇拝否定の二つの方向
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イスラム教では、神を象った偶像を作ってこれを崇拝することを禁じています。数年前にタリバンがバーミヤンの大仏を破壊したの は記憶に新しいところですが、古くから仏教とイスラム教がせめぎ合ってきた西域では、ほとんどの石窟寺院で仏教壁画に描かれた仏 の顔が剥ぎ取られ、仏教遺跡に残る仏像には首がありません。
どうしてイスラム教は、異教徒の偶像を破壊するほどファナティックに偶像崇拝を憎悪するのでしょう。
イスラムでは、神である「アッラー」は、一切を超越した全能の存在とされます。アッラーには姿形はなく、ただ意思のみがあって、 それが様々な現象としてこの世に顕現するとされます。ですから、アッラーを具象化することはアッラーの存在を貶めることにほかな らないとみなされるのです。
日本の神道も、本来は、神を人間の目に見えるような具体的な存在とは考えず、姿形のない全能の存在ととらえていました。 神道の神は、この世の創造主であり、さらにいつでも、この世にあまねく存在し、様々な「現れ」を示します。その「現れ」は大仰 なことばかりではなく、ほんの些細な動き、例えばそよ風に揺れる草や虫の鳴き声、小川のせせらぎなどにも見て取ることができ、私 たちは常に神に囲まれて生きていると考えます。「八百万の神」という言葉が端的に表わすように、神は数え切れないほど無数に存在 するというわけです。
イスラムのアッラーが姿形がなく全能であるというのであれば、アッラーは八百万の神と同様の無数の「現れ」の総体であるといっ てもいいわけです。この「総体」をあくまでも一つと想定するところにイスラムのファナティシズムの根があるような気がします。
神道では、総体をあえて統合せず、無数のままで受け入れてしまう。元々神は無数なのだから、そこに新たな神や原理が加わっても 違和感を持たない。だから、仏教の仏と日本の神様はどんどん習合していくし、本来無形であるはずの神の「神像」があっても、これ も一つの神の「現れ」として受け入れてしまう。あまり芸の無い言い方ですが、そんなことから「神道は凄いな」とあらためて感動し てしまいます。
日本人にとっては、ユダヤ教もキリスト教もそしてイスラム教も、すべて、「それもありだな」と神道的価値観によって許容し、違和 感を持ちません。それは、他宗教を「理解する」という意味ではなく、もっと大らかというか鷹揚に、八百万の神という網で覆ってし まうのです。簡単に言えば、「全ての物事は神の現れ、その事自体が神様なんだから、全部一緒」というわけです。神をある一つのモ ノと規定してそれを崇める宗教からすれば、それが無宗教に見えるのは当然でしょう。
タイトルに「偶像崇拝否定」という言葉を使いましたが、神道においては、「否定」という積極的な姿勢はないので、本来は「偶像 崇拝困難」と言うべきでしょう。その意味では、イスラムもまったく同じです。
イスラム神秘主義のテキストを読んだり、あるいは「アラビアン・ナイト」などのイスラム文学に接すると、理屈抜きに共感できるの は、それが私たちが身につけている神道的世界観に非常に近いからでしょう。
最近、「神道的な世界観や価値観が、閉塞した世界をブレイクスルーさせる鍵となる」といった言説をよく見聞します。私自身、確 かにそう感じてもいます。ですが、ただ、神道的な世界観を世界に向けて発信するだけでは、なかなか理解してもらえないように思い ます。
本当の根っこは、同じような世界観を根底にした神道とイスラムが、どうしてあらゆるものを許容する方向と、排他的な方向という 真逆な方向に進んでしまったのか、その部分に焦点を当てないと、説得力のあるアピールはできないと思います。それは、私自身、こ れからじっくりと考えてみようとしているテーマなのですが…。
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お知らせ
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☆12月15日:朝日カルチャーセンター湘南教室
今回のテーマは「冬至に秘められた意味を探る」です。
クリスマスという行事の意味をご存知でしょうか? これは、キリストの生誕祭ではありません。クリスマスは、元々、古代ローマ のサトゥルナリ祭や北欧のルシア祭、ミトラ教の冬至祭など、冬至の太陽に祈りを捧げる行事でした。
日本でも、真言宗や天台宗など密教系の仏教宗派に「星祭り」と呼ばれる冬至祭が伝わっています。
冬至祭は太陽の再生を祈念するもので、冬至の夕方に没していく太陽に向かい、再生の力を人間が送るという意味が込められていま す。身近に残る冬至祭の実例を紹介しながら、太陽、ひいては宇宙と人間との関係について考察します。
http://www.asahiculture.com/LES/detail.asp?CNO=176256&userflg=0
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レイラインハンター内田一成の聖地学講座第10回
「この世とあの世を結ぶ場所 その3」 http://www.mag2.com/m/0001549333.html
より抜粋
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