「スラックライン」なるものの存在を始めて知ったのは、1年ほど前だった。 ターザン誌などで活躍されているスポーツライターの久保田亜矢さんから、 ボーダーやサーファーがオフシーズンのトレーニングに綱渡りをしている、それが「スラックライン」だと聞いた。
調べてみると、元々、フリークライマーたちがクライミングの余興として、 岩のてっぺんどうしをクライミングのスリングなどで使うナイロンのテープで結んで、それを渡っていくことから始まって、それが地上に降りて、 手軽にできるアクティビティとして定着したものだった。
それからしばらくして、以前、一緒にプロジェクトを進めていた昭文社の登山地図を担当する中島君と会って、彼の口から、また、 「スラックライン」という言葉が出た。
彼は、ヒマラヤ遠征もする本格的なクライマーだが、登山地図担当となってからはもっぱらボルダリングに嵌っていた。
「最近、ボルダリングに行ってる?」
と聞くと、
「ゲレンデには行ってるんですけど、もっぱらスラックラインですね」
と返事が返ってきた。
「どんなメーカーがあるの?」
「ドイツのGIBBONていうメーカーが有名なんですよ。黄色い、クラシックってモデルがお勧めですよ」
彼とは、アクティビティの好みが極似しているのだが、その彼が今もっとも嵌っていると聞いては、やってみないわけにはいかない。 そこで、さっそくその夜、ネットでスラックライン『GIBBON CLASIC 15m』を注文した。
幅50mm、15mのナイロンのライン(テープ)。それに、 トラックの荷台フックにテンションをかけて固定するためのラチェットが取り付けられている。木を左右のアンカーにして、ラインを絡ませ、 ラチェットでテンションをかけて張るだけ。設置は数分でできる。
ぼくは、これをツリーイングのインストラクター講習の現場でデビューさせた。
新しいツリーイング技術などを勉強する会なのに、メンバーはみなこの新しいアクティビティに嵌ってしまい、あまりの難しさに、 腹を抱えて笑い転げながら、半日みっちりスラックラインに興じてしまった。
それからは、ツリーイングのイベントでは必ず組み合わせ、時には空中高く設置して樹間を渡る回廊としたり、 空中ブランコのテイクオフ用の足場として使ったりするようになった。
スポーツでも職人技でも単純なものほど難しく、奥が深いといわれるが、 スラックラインはスポーツとしてはこれ以上単純なものはないだろうというほど単純で、だからこそそれだけ奥も深い。また、単純だからこそ、 他のアクティビティやシチュエーションにも合わせやすい。
「どうです、スラックライン上達しました?」
中島君と久しぶりに会うと、第一声で聞かれた。
「まだまだ三歩か四歩がやっとだよ」
すると、彼は高笑いして、
「スラックラインを語っていいのは、端から端まで歩けて、さらにバックで戻れるようになってからですからね。まだまだですね」
ときた。
さて、今日も半日、スラックラインにいそしむとしよう(笑)
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