2001年、米軍は軍用としてスクランブルが掛けられていたGPS信号を民間でもそのまま高精度で活用ができるように、 スクランブルを解除した。そのときから、GPSの躍進が始まる。
今では携帯電話に実装され、ハンディナビやPNDとして極々身近な電子デバイスとなった。
スクランブル解除直後、ぼくは日本で「いいよねっと」が発売したeTrexVista日本版をいち早く手に入れ、 登山やオートバイツーリングで使い始めた。
当時はまだモノクロ液晶で、地図はごく大まかな1/20万スケール、ナビ機能もなく電池寿命も最大で7時間ほどだった。
それでも、携帯電話ほどのサイズで、地図が表示され、正確に現在位置が把握できることは画期的で、 ぼくはあらゆる場面でこれを活用した。
当時はまだ非常に珍しく、オートバイのハンドルにマウントしていると、ガソリンスタンドで、「オートバイ用のナビがあるんですねぇ」 と、感動されて、そのまま小一時間デモンストレーションするはめになるといったこともしばしばだった。
当時アメリカで標準の単三電池は外側を紙で巻いたものがポピュラーで、日本のものに比べると外寸がほんの少し大きかった。 それに合わせて電池ボックスが設計されていた。そのため、日本製のやや小さい電池では、 自転車のハンドルにマウントしていてバウンドしたりすると「瞬断」と呼ばれる現象が起きた。
これは、電池ボックス内で電池が暴れ、一瞬接点が離れて電源が落ちてしまうものだった。これを防ぐために、 接点の裏側に小さく切ったラバーを貼り付け対処した(後に日本仕様のモデルは始めからラバーが装着されるようになった)。
取材の現場で、こうした現象やバグなどを発見すると、その場からいいよねっとの真鍋社長に電話をして、対策を練ったりなどと、 まだまだ発展途上の「手作り感」のある時代だった。
その後、ぼく自身、仕事でもプライベートでもGPSに惚れ込み、eTrexVista日本版からはじまり、GEKO205、 GPS-V、MAP60CS、eTrexVistaC、 Streetpilot2610、nuvi250、zumo、MAP60CSx、 eTrexLegendHCx、Colorado300、 Edge705、そして今回のOregon300と、 まさにGPSの進化に合わせて遍歴することとなった。
初期のeTrexから、完成された今の機種に至る間、天頂衛星による差分を計算することでさらに精度が増し、 受信ユニットや組みまれるアルゴリズムも進化して、どんどん受信感度も向上していった。また、 カーナビ同様のルーティングも行えるようになり、アウトドア用、フィットネス用、車載PND、モーターサイクルナビと、 機能や性能が細分化していった。
そして、ふと気づくと、自分もTPOに合わせて複数のGPSを使い分けるようになっていた。
この4月、新たに登場したOregon300日本版はPNDにも劣らない見やすいサイズの液晶を備え、 コンパクトで持ち運びが苦にならず、電池寿命も20時間あまりと長い。これなら、 かつてeTrexVistaをあらゆるシーンで活用したように、 Oregon一台で済ませられるのではないかと思った。
車やオートバイで目的地へと出かけ、そこで自転車に乗ったり、山に登ったり、さらにはシーカヤックで海に漕ぎ出したりする。 道を走るときは、詳細なロードマップでナビゲーションして、山では地形図を呼び出してルートファインディングに活用する。そして、 シーカヤックでは、海図を活用する。それは、まさに自分のライフスタイルで、Oregonならその全てに一台で対応できるはずだ。
今までの機種では、SDカードやmicroSDカードのスロットを備えていても、2GBまでしか認識しないという制約があったが、 Colorado以降はそれもなくなり大容量のSHD仕様のカードが使用できるようになった。
最新のGARMINのマップソースは、ロードマップである「シティナビゲーター」がVer.10で、 2008年のzenrinの地図データが収録されている。これのサイズが1.2GBあまり。地形図「TOPO-10M Ver.8」 は登山道データが収録されていて、また主要な山小屋や非難小屋などのデータがPOIでデータとして提供されている。これが1.8GB。 そして日本近海図「ブルーチャート Ver.9」は300MBあまりの容量となる。
その全てのマップを転送しても、4GBのmicroSDがあれば余裕で収録できるはすだ。
一台のGPSにこのデータが収録されていれば、カーナビとしての利用からトレッキング、 シーカヤックやヨットなどのマリンスポーツにシームレスで利用できる。
というわけで、まずはデータ転送から試みることにした。
**Oregon300本体とマップソース三種類を用意。マップソースはmicroSD版もあるが、
それだと共存はできないので、ここではDVD版を大容量のmicroSDへ転送することにする。
OregonのmicroSDスロットは電池ボックス内にある。しかし、
この小指の爪よりも小さいメディアに4GBのデータが入れられるとは……**
OregonはUSBケーブルでPCと接続するが、シティナビゲーターでは、 詳細な住所検索のためのファイルを生成して転送するし、TOPOは元々が巨大なデータだしと、 全国全てのデータを転送するには4~5時間はゆうにかかる。
また転送する間、仮想メモリ領域をかなり使うので、 Oregonのセットアップが完了するまでは、PCを転送作業専用として、他の仕事をするか読書でもしていたほうがいい。
今回は三本のマップソースをそれぞれロック解除したり、 マップソース側での追加を忘れていて転送をやり直したりと、丸1日この作業に費やしてしまった。
だが、全てのマップを転送し終えて、それぞれのマップを呼び出してみると、 間違いなく機能し、Oregonがまさに万能GPSとなったことに、 はじめて日本地図を表示したVistaを手にしたときの感動が蘇ってきた。
ほぼ10年。GPSの世界を渉猟してきて、行き着いた先は、元の「ハンディGPS」 というカテゴリーだった。
しかし、いろいろな地図を見ているうちに、 フィールドに飛び出したくてうずうずしてきた。
この夏は、この「万能Oregon300」を片手に、 あらゆるフィールドを遊びつくして紹介していくので、どうぞお楽しみに!!
**全てのマップソースをmicroSDカードに転送。とりあえず三種類を有効にしたが、
状況に合わせてプライオリティを変更してやれば、確実に動作する**
**最新のシティナビゲーターVer.10は2008年版のzenrin地図を収録。
住所検索や電話番号検索も細かくできるようになった**
**TOPOでは、イメージしやすい3D表示も可能に。いいよねっとが用意している山小屋・
非難小屋POIデータをダウンロードしておけば、いざという時心強い**
**湖の夏は、瀬戸内の小島巡りをする予定なので、
ブルーチャートはさっそく活躍しそうだ**
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