オートバイ

【インプレッション】CACAZAN メッシュサマーグローブ

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CACAZANの出石さんが、わざわざ能登までグローブをデリバリーしてくれた。ヘルメットがお揃いなのは、偶然

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ブランニューの"サマーメッシュグローブ"

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なんと、Tigerのカラーに合わせたスペシャルのツートン

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手の平側はしっとりとした感触で、ダイレクト感がある鹿革。当て革の形状やステッチも絶妙

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甲側は牛革のコンビ。プロテクターもしっかりしていて、しかも動きを邪魔しない

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こちらは出石さん個人のもの。GSのカラーにマッチした色使いになっている

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グローブのおかげでTigerの巨体がコントローラブルなので、ついつい遊びすぎてしまった

 

 連日の酷暑が続く中、『ツーリングマップル・中部北陸』の取材で、トライアンフTIGER800XCAを走らせている。

 その途中、石川県羽咋市の千里浜海岸で、CACAZANの出石さんと待ち合わせた。CACAZANといえば、ポルシェやフェラーリなどスポーツカーユーザーから熱烈に支持されるオーダーメイドドライビンググローブで有名だ。また、スバルのファクトリーブランドであるSTIとのダブルネームでも展開するなど、ファクトリーチームにもその高い品質が認められている。出石さんは、手袋職人としての長い経験を生かして、CACAZANブランドを立ち上げたまさにその人だ。

 今回は、CACAZANが新たにラインナップに加えたサマーメッシュグローブを出石さん自ら、ぼくの取材現場まで届けてくれた。

 御ろしたてのBMW310GSで颯爽とやってきた彼が「はい、これ」と差し出してくれたのは、なんと既成のラインナップにはないTIGER800XCAのカラーに合わせたホワイトとブラックのツートンカラーのグローブだった。

 じつは、CACAZANでは、本格的にドライビンググローブを手がける以前から、モーターサイクル用のグローブをリリースしていた。その一つが、今でも定番として人気の"TAKA-011"というモデルで、しなやかな鹿革を使ったそのグローブを、ぼくは10年あまり前にオーダーして、いまだに使い続けている。

 今回ラインナップに加わったサマーメッシュグローブは、ハンドルを握る手の平側はしなやかな鹿革で、甲側にはプロテクション性の高い牛革が使われている。そして、どちら側にもメッシュ加工が施されている。

 鹿革のフィーリングの良さは、すでにTAKA-011で知っているので、それがメッシュ加工されたサマーグローブになるとどうなのか手にする前から興味があった。そして、グローブを嵌めてハンドルを握っただけで、さらにフィーリングが良くなっていることは、すぐに体感できた。TAKA-011は冬でも十分使えるスリーシーズングローブで、使われている革は厚手のものだ。それに対してサマーメッシュグローブは、革が薄手なのでよりダイレクト感があり、また伸縮性も高い。さらに、メッシュ加工によって革の柔軟性が増している。

 レポートライダーという仕事柄、今まで革製のものも、ファブリックのものも、ロード用からモトクロス用まで、様々なモーターサイクルグローブを使ってきたが、このサマーメッシュグローブは、掛け値なしに最もフィットするグローブだと感じた。

 モーターサイクルのハンドルバーは、左右のグリップを外側からドアノブを掴むように握り、ブレーキレバーには人差し指を、クラッチレバーには人差し指と中指を常に掛けていて、フロントのタイヤとフォークが自由に動けるように腕の力は抜いている。

 ブレーキレバーやクラッチレバーを握るときは、ハンドルに余計な力が伝わらないように、なるべく指先だけの繊細な動きで操作しなければならない。また、スロットルを操作する右手は、やはりハンドルに余計な力が加わらないように操作するのだが、レバーに指を掛けながらスロットルをオンオフさせるので、左手よりもさらに繊細で複雑な動きになる。グローブはそんな動きに対応するように、ダイレクト感の高いものがいい。

 一般的に革のグローブの場合は、ダイレクト感が高く、繊細な操作がしやすいが、指の屈伸や手の捻りなどの動作に対して、革が突っ張る傾向にあり、長時間の着用では疲れやすい。ファブリックのグローブは革に比べてダイレクト感が少ないが、軽く柔軟なので疲れにくい。革とファブリックの良さを併せ持ったようなグローブが理想形だ。さらに、万が一の際のプロテクション性の高さもモーターサイクルグローブに求められる機能の一つだ。

 CACAZANのサマーメッシュグローブは、レバーやスロットルに接触する手の平側にしっとりとした感触の鹿革が使われているので、ダイレクト感はとても高い。鹿革は、実際は乾いているのに、ほんのりと湿気を帯びたような感触が特徴で、ハンドルを握った瞬間に吸いつくような感触がある。CACAZANのドライビンググローブユーザーは、「グローブがハンドルに吸いついて、車との一体感が味わえる」と言うが、このサマーメッシュグローブでは、それがモーターサイクルで実感できる。当然、微妙な操作も、自分の思い通りにできるので、結果的にモーターサイクルがとてもコントローラブルに感じられる。

 千里浜では、締まった波打ち際だけでなく、轍が錯綜したフワフワなサンドを走ったりもした。こういうシチュエーションでは、ビッグバイクはとくにコントロールが難しく、神経を使う。フロントブレーキレバーもクラッチレバーも微妙な断続操作が必要で、少しでもラフに操作すると、フロントをとられて、即転倒ということになってしまう。普通の革グローブでは、革独特の突っ張る感じが、しばしばタイミングを乱す。ファブリックの場合は、レバーに載せた指が断続操作のうちに滑ったり、グローブの中で指が泳いでタイミングが狂うことがある。このサマーメッシュグローブでは、そんな不安がまったくないので、自在にTigerの巨体を振り回すことができる。そんなわけで、ついつい楽しみすぎて、汗だくになるまで遊んでしまった。

 グローブを受け取ってから、能登半島をほぼ一周し、さらに富山湾岸を東に辿って黒部まで走り、茨城の自宅に戻った。総距離は1600kmあまり。これを4日で走ったが、いつもなら指が突っ張り、手全体が浮腫んだような疲労感が残るのだが、そんな疲労感は皆無だった。

 今回のツーリングは、連日の酷暑を突いて走る厳しいものだったが、グローブが汗で濡れることもなかった。以前、やはりメッシュの革グローブを夏場に使ったことがあったが、一日走り終えると汗でビショビショで、それを乾かすと、革が縮んで突っ張った感じになり、それがさらに疲労を助長することになった。それで、夏場に革のグローブは使えないという先入観があったのだが、そんな杞憂も吹き飛んだ。

 酷暑の中でも、このグローブではほとんど汗をかかなかったが、それは、やはり鹿革の柔軟性のおかげで運動量が少ないことがひとつのの要因だろう。また、メッシュの面積が広く、通気性自体が高いことも挙げられる。走行中に手を横に出して広げると、爽快に風が通るのがよくわかる。

 一つだけ気になるのは耐久性だが、スリーシーズン用のTAKA-011は10年間使い続けて、指先の鹿革が少しささくれてきた程度なので、メッシュ加工によってそれよりは耐久性は低いとしても、数年はハードに使っても問題ないと思う。仮に指部分の革が擦れて抜けたり、引き裂けたりしても、CACAZANでは修理対応してくれるので、愛着の湧いたグローブを長く使い続けることができる。

 また残暑がぶり返してきそうだし、そのまま秋になったとしても、本格的に寒くなるまでは十分このグローブで対応できるので、気になったら、ぜひオーダーすることをおすすめする。

●CACAZANブランドサイト
 https://www.caca-zan.net/

●オンラインショップ
 https://cacazan.shop-pro.jp/


今年の相棒"トライアンフ TIGER 800 XCA"

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今年の「ツーリングマップル中部北陸」の取材車両がやって来た。久しぶりのトライアンフだ。

トライアンフは、3気筒エンジンを搭載した初代のスピードトリプルやそのスーパースポーツ仕様に乗り、さらにベーシックモデルのパラレルツインのボンネビル、そして初代のタイガーに乗ったが、かれこれ15年くらい経っている。

トライアンフの3気筒モデルは、とにかく吹け上がりが軽く、気持ちのいい印象があった。今年の相棒の"TIGER 800 XCA"は、そんな3気筒の800ccエンジンを積んでいる。

さっそく走らせてみると、昔のよく回る印象はそのままに、低速のトルクもあって、どんなレンジでも乗りやすいモデルになっていた。初代のタイガーはちょっとトップヘビーな感じだったが、熟成を重ねてきたこのこのモデルは、重心も低くコントロールしやすい。

この数年は、BMW1200GSやKTMのアドベンチャーシリーズを相棒にしてきたけれど、ツインエンジンのGSやKTMと比べると、やはり3気筒のタイガーは吹き上がりがスムースだ。しかも4気筒に比べればスリムで軽量なので、取り回しは2気筒モデルとほとんど変わらない。さらに、XCシリーズはフロントが21インチのオーソドックスなオフロードタイプのホイールで、直進安定性が良く、轍にもハンドルを取られにくいので、どんどんオフロードに入って行こうという気にさせる。とくにサンドで轍が錯綜しているようなところだと、18インチのフロントホイールを履く他のアドベンチャーモデルでは気を使うけれど、XCAは減速することなく、そのままスッと踏み込んでいける。

やや立ちが強い印象があるけれど、逆に自分から寝かし込んでいくようなコーナリングは、昔のエンデューロモデルのようで、個人的には好みだ。

ギアは6速だけれど全体にクロス気味なので、6速までシフトアップしてもまだ上のギアがあるような気がして、シフトペダルを上げようとしてしまう。メーター内に大きなインジケーター表示があるので、「あれ、もう6速なのか」と気づく。GSやKTMのアドベンチャーモデルは、6速はオーバードライブ的で、一般道を50 - 60km/h程度で流すには、ちょっとギクシャクしてしまったが、タイガーは6速60km/hで2400rpm程度なのでギクシャク感はないし、そこからスムースに加速していける。欲をいえば、6速は高速での燃費向上を意識して、もっとオーバードライブにしても良かったように思う。

もっとも、フロント21インチとあいまって、クロス気味のギアは、オフロードに入ると、常に最適なトラクションを掛けていられるので気持ちがいい。これは、TKCあたりのピックオフロード用のタイヤを履かせて、アグレッシブにオフロードを走りたくなる。

というわけで、今年は、このタイガーを相棒に、林道なども積極的に走ってみようと思う。

また、走り込んでから、詳しいインプレッションをしてみたい。

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スリムに仕上がった3気筒は、パラレルツインとボリュームがさほど変わらない。スキッドガードがまたオフに踏み込む気にさせる

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ホワイトパワーのショックは手軽に減衰力を調整できるので、自分好みにセッティングできる

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ギュッと絞り込まれたタンクは、とてもニーグリップしやすい

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視認性の高い多機能液晶メーター

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最新モデルらしく、多様な走行モード選択ができたり、クルーズコントロール、シート・グリップヒーターなどが装備されているのはいいのだけれど、スイッチ類が多くて、ときどき、押し間違えることも…

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2018年夏・ツーリングマップル取材準備

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『ツーリングマップル中部・北陸』の取材担当となって、気がつけば早20年。今年も取材の季節が巡ってきました。

この数年は、梅雨入り前に表紙の写真撮影をと早めに動き出していますが、今年は、来月の6日からを予定しています。どうも梅雨入りが早まりそうで、微妙なところですが、なんとか晴れ間を縫って、いいシーンが撮れればと思っています。

ちなみに、去年は、R版が木曽路でのスナップ、通常版は長尾峠付近で御嶽山を背景の写真が採用されました。

今年の候補は、能登が第一候補ですが、天気の様子を見ながら、臨機応変にいこうと思っています。

これから、取材車両やギアなども紹介しながら、ツーリング風景をお届けしていきます。